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【映画2013】シネコン至上主義#8

「ゼロ・ダーク・サーティ」、「ジャッジ・ドレッド」、「脳男」、PARKER/パーカー」、「王になった男」をオススメ。

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

試写会ではなく、都内のシネコンなどで普通のお客さんといっしょに
お金を払ってみた映画作品の推薦文です。
映画を映画館で見る理由となる3つの要素について採点しています。
星が少なくてもお金を払って見るに足ると評価した映画だけを
五点満点で紹介しています。
ここに紹介している作品は甲乙つけがたいものばかりです。
気になった作品なら、ぜひスクリーンでご覧になってください。

「スクリーン必然性」3D効果や臨場感、サウンドなど、
家庭のテレビ画面でなく、映画館で見る必然性を示します。
「インストール強度」人生の一部として、
自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。
「おっぱい指数」映画に必要な裸の女優の割合を
物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。


今回はアクション映画の秀作が多かったです。

【ゼロ・ダーク・サーティ】

スクリーン必然性 ★★★★
インストール強度 ★★★★★
おっぱい指数   ★

■推薦文
勉強のために映画を見ることなどまっぴらごめんだし、
だれかに「これを見て○○を学んだほうがいいよ」というのは、
最低の紹介だ。
それでもこの映画にはスクリーン体験を通じて得られる
「現代」が横溢している。
「ゼロ・ダーク・サーティ」とは、深夜0時30分のこと。
ビン・ラディン襲撃のブラックホークヘリが飛び立った時間だ。

アメリカがアルカイダの指導者、オサマ・ビン・ラディンを
襲撃し殺害したのが、2011年5月2日。
そこから1年半ほどで完成したという事実がなによりもすごい。
監督たちはもともと潜伏するビン・ラディンをテーマにした
映画のために取材していたため、
これほど短い期間で完成させることができたそうだが、
それにしてもすさまじい完成度だ。

ビン・ラディンの居場所を見つけ出すためには、
文字通り「藁の山から針を探す」努力を要したが、
映画はビン・ラディン襲撃というゴールに向かって、
その膨大な情報の中から、コントラストをつけ、一筋の道をたどっていく。
その道を歩む主人公は、007のような現地で奮戦する諜報員ではなく、
高卒の若い女性分析官だった。
当初は拷問の現場に立ち会って目を背けていた彼女が、
いつの間にかビン・ラディン"処刑"をだれよりも熱望し、
上司に圧力をかけていく。

映画に登場するCIAの分析官といえば
「レッド・オクトーバーを追え!」や「今そこにある危機」の
ジャック・ライアンが有名だが、
ジャック・ライアンのようにアクティブな行動はしない。
「ゼロ・ダーク・サーティ」の主人公、マヤの行動する舞台の多くは、
パキスタンやワシントンのオフィスだ。

恋人はいるか、結婚しているか、家族はいるのか、
そういった個人的なプロフィールはいっさい描かれない。
研ぎ澄まされた描写のためでもあり、
そのプロフィールの公開が復讐の連鎖を呼ぶおそれがあるためだろう。
個人としての感情は
演じるジェシカ・チャスティンの表情を読み取るしかない。
あるいは、オフィスの机の上にあるものやパソコンの壁紙などが、
彼女の動機や感情を間接的に伝えるのみだ。

必要最低限の描写が、恐怖と不安に苛まれたアメリカの感情を伝えてくれる。

男性社会の中でさまざまな組織の壁を突破し、
耐えがたい時間を過ごして達成した目標が、これなのか。

なによりもぞっとするのはビン・ラディンを捕縛することではなく、
暗殺が目的だということだ。
国家による殺人の背後に若い女性がいて、
その執念がアメリカの断固たる鉄槌の推進力となる。
復讐の連鎖を肯定し、闇をより一層深めていく。

アメリカという国家による暗殺といえば、
山本五十六海軍大将機を待ち伏せして撃墜した
海軍甲事件を思い出してしまうが、
それよりもさらに暗くおぞましい。
彼らはビン・ラディン捕縛による事件の実態解明より、
悪の象徴の抹殺を選んだのだ。

極秘の実験機体、ステルス型ブラックホークヘリ2機を出撃させ、
精鋭SEALs部隊が突入するクライマックスの迫力は映画史に残るものだが、
作戦進行とともに、心に溢れてくるのは高揚するエネルギーではなく、
わりきれない虚しさだ。沈殿する疑問だ。正義の不快感だ。

この薄気味悪さを味わうことが、
現代を見つめる視力を回復させるために必要なことではないだろうか。
そのためにも映画館で嫌な思いをしてきてください。


■採点理由
最後の突入シーンを全視野で堪能するためにも
「スクリーン必然性」は★★★★。
監督の前作同様、容易には消化しがたい事実をつきつけるから
「インストール強度」は★★★★★。
オフィスとヒゲの男と兵士しか出ないから「おっぱい指数」は★。


■以下ネタバレ
信じがたい911というテロに対抗するには、
自身を狂気に染めていくしかなかったマヤ。
しかし、エンドロール直前の慟哭の行き着く先は……。
アフガン戦争終結後のタリバンが、
ビン・ラディンのテロを生んだことを考えると、
連鎖は終わらないのではないかと思ってしまった。




【ジャッジ・ドレッド】

スクリーン必然性 ★★★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★★

■推薦文
司法さえ超越した国家による正義のおぞましさは格別だが、
映画の中での問答無用の正義は最高に気持ちいい。
こればっかりは仕方がない。

1995年のシルベスター・スタローン主演作品は忘れてほしい。
ぼくらが2013年に体験するこれこそ、決定版。
これこそ、至高。これこそ、映画だ。

核戦争後の近未来、残された人々が蝟集する巨大都市で、
増加する凶悪犯罪に対処するため、
逮捕も判決も処刑も現場で同時に執行する究極の存在がジャッジなのだ。
桜吹雪さえ見せずに悪い奴らをぶち殺す、究極の金さん!

以前の「シネコン至上主義」でも
インドネシアのアクション映画「ザ・レイド」のすばらしさを語ったが、
「ジャッジ・ドレッド」のプロットもまったく同じだ。
壮絶な力を持つギャングが根城とする高層ビルに乗り込み、
孤立した状況の中、最上階にいるボスを倒す。
「ザ・レイド」では格闘技シラットが
対決の肉体言語として威力を発揮したが、
「ジャッジ・ドレッド」は無敵の銃と、
ゆるがない正義の力が道を切りひらく。

すごいのは、脚本のアレックス・ガーランド、
撮影のアンソニー・ドッド・マントルと
「28日後」のダニー・ボイル組であったりすることで、
アクションや撮影に狂いがないことだ。

顔の多くを隠し、口の周囲だけ、露出させて、
威圧感たっぷりに行動するジャッジ・ドレッドはロボコップみたいだし、
ラスボスの女ギャング「ママ」は、最高にクールだし、
重厚さのかなたからやってくる過剰さはすさまじくクレイジーだし、
SFとしての設定はぶれない。
これは何度も見たいアクション映画だよ。

なによりすばらしいのは、
武骨なジャッジ・ドレッドと組むサイキック美少女、カサンドラ!
相手の意思を読むテレパスとして、
卒業試験代わりにこのミッションに参加したのだけれど、
彼女の魅力が作品の評価を数段あげている。
血なまぐさい現場でヘルメットもかぶらず
ブロンドの髪をなびかせ武骨なヒーローに寄りそうことを
これだけ、的確に描いた作品があっただろうか。

カサンドラを演じているのは、
シェークスピア舞台出身のオリヴィア・サールビーという女優だが、
世界の女優でイチオシにしたいノーブルさと演技力だよ。
彼女がこれから人気を集めることは想像に難くない。

戦う正義は気持ちいいぜ。


■採点理由
3D映画ってこともあるが、
圧倒的な音量が興奮を高めるので「スクリーン必然性」は★★★★。
正義の快感を最適化した内容で「インストール強度」★★★。
短いカットの中で、ヒロインのおっぱいもちらっと見えるけど、
ボディダブルをつかっているとのことで「おっぱい指数」は★★。
おっぱいは自前を使ってください。


■以下ネタバレ
最後の最後までドレッドが素顔を見せない演出にうなってしまった。
さらにヒロインの成長がほんとにうれしくなるエンディングだよね。
それにしても麻薬工場とか、裏切り者の出現とか、
「ザ・レイド」との相似はすごいね。
こういう設定を使ったら、仕方ない部分もあるんだろうけど。




【脳男】

スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★★
おっぱい指数   ★★


■推薦文
冒頭、説明過剰気味のシナリオと
松田優作もどきな江口洋介に辟易していたのだが、
脳男こと、生田斗真が現われたあたりから、ぐいぐいと引き込まれていく。
この手の日本映画には失望させられることが多いけれど、
これはかなりハイレベルなピカレスク・アクション映画といっていいだろう。

人としての感情がなく、肉体の痛みさえ感じないから「脳男」。

もちろん、過剰な爆発とどこかで見たようなシーンもあるけれど、
善悪、両キャラクターの存在感が卓抜なので見飽きない。
生田斗真のキャラクター作りは、日本映画のレベルを越えているし、
恐るべき子供、緑川紀子を演じる二階堂ふみには驚いた。
「ヒミズ」とも「悪の教典」ともちがうキャラクターだ。

なにより観客を信頼して、過剰さを嫌い、
抑制を心がけた演出がうまくはまって、楽しめる作品になっている。

アンチヒーローとして「脳男」は
現代の「必殺仕事人」的ピカレスクであり、
「ドラゴン・タトゥーの女」の要素もある。
この設定でデビッド・フィンチャーがリメイクしたら、
すごいことになりそうだ。

過度なキャラクター化さえなければ続編を希望したいし、
続編ができてこそ、確立するドラマだからね。


■採点理由
テレビサイズ演出との境界線上にある作品だからこそ
「スクリーン必然性」は★★★。
異能なドラマが意外とうまく収まってしまったため
「インストール強度」は★★。
松雪泰子は胸元を開けて、頑張って谷間を見せているけど、
それだけじゃ「おっぱい指数」は★★なのよ。


■以下ネタバレ
突如あらわれて、敵と対峙する構図。
世界を巻き込みながら、敵に対しては一直線。
因果めいた誕生の謎と特殊な生。
これすべてゴジラやガメラなど、
日本の怪獣映画のモチーフでもあるよね。

【PARKER/パーカー】

スクリーン必然性 ★★
インストール強度 ★★
おっぱい指数   ★★★

■推薦文
そうだよ。
ジェイソン・ステイサムにパーカーを演じさせるのは、
すばらしいキャスティングだよ。
クライムアクションの到達点ではないかと思えるほど、
すべてがきちんとしていて、熱度が高いマスターピースだった。
アメリカの娯楽映画でみたいものの詰め合わせだ!

リチャード・スターク(ドナルド・E・ウェストレイク)の原作をもとに
「愛と青春の旅立ち」や「カリブの熱い夜」の
テイラー・ハックフォード監督が、周到に作っただけあって、
テーストはオールドファッションではあるが、
主人公の行動原理、敵のキャラクターがゆるがない。

今回は紹介しなかったが
「ダイ・ハード ラスト・デイ」のような大雑把さがない。
お手本のような作り方だ。
ただ、そのていねいさがいまどきのお客さんには
まだるっこしく感じられるかもしれない。

ただ、冒頭で騒ぎ出す警備員を落ち着かせるシーンや、
愛する人はただひとりだけという生き方を貫くシーン、
ほとんど不死身だけれど痛みを感じさせるシーンなど、
最近のアクション映画が雑にしてきた描写をきちんと描きつつ、
そこから、ボンと飛び出す潔さもある。

なにより原作小説のよさがきちんと反映されているアクション映画なんて、
滅多にないだけにかなりの好感触だ。


■採点理由
テレビの深夜枠でしっかりみても楽しめると思うので
「スクリーン必然性」は★★。
あまりにも丁寧に作られているので、
インパクトが弱くなっているから「インストール強度」★★。
ジェニファー・ロペスのおっぱいは出ないものの、
恋人やストリッパーのさりげない露出があるので、
「おっぱい指数」は★★★。

■以下ネタバレ
オープニングでタイトルのロゴがでてきたシーンが、最高だったよね。

【王になった男】

スクリーン必然性 ★★
インストール強度 ★★
おっぱい指数   ★


■推薦文
テレビドラマではおなじみだが、韓国の宮廷ものはほとんど観たことがない。
それでもこれはおもしろかった。
やるべきことのすべてを、きちんとやっている
バランスのよいコスチュームメロドラマだ。
なにより、役者がほんとうにいい。
クライマックスが迫ってくるにつれて、胸が熱くなってきた。

宮廷内の陰謀で命を狙われることをおそれた王が仕立てた影武者は、
妓生宿で座をわかせる道化だった。
王が愛妾のもとに通う夜だけ影武者をつとめるはずだったが、
王が危篤になったため、昼の代役を務めることになった。

下層のものが王の代役になる設定、激動の時代、
正室に正体が明かされそうになるサスペンスなどなど、
小説「影武者徳川家康」などで
読んだようなシチュエーションがたびたび出てくるが、
そのひとつずつをきちんと描いているため、ドラマの満足度が高い。

多様な役者のよさと演出のよさには裏切られない。
王と影武者を演じ分けるイ・ビョンホンはもとより、
影武者を仕立てる能臣、王の正体に疑問を抱く護衛、
派閥の間で揺れる王妃、王に目をかけられる毒見役の少女、
さりげなく王を盛りたてていく宦官。
そのだれもが味わい深く、感動への導線となっている。
抑制と飛躍のバランスが絶妙だ。

字幕が読める年ごろから、年配の人まで、広くすすめられる映画だ。

■採点理由
REDカメラを使った映像はよくできているし、
スケール感も感じさせるが、TVサイズでも堪能できるので、
「スクリーン必然性」は、★★。
「王子と乞食」、「影武者」と、
このモチーフはおなじみのものなので「インストール強度」★★。
王妃の胸チラはあるけど、お子様も安心な「おっぱい指数」は★。

■以下ネタバレ
身分や結婚など、李氏朝鮮社会の常識もあるのだろうが、
決して越えてはならない一線を越えないバランスがいい形で出ていたね。

★今月とりあげなかった映画
おすすめの映画をなるべく紹介したいのですが、
今回、いろんな理由で紹介しなかった映画は以下のものです。

「ダイ・ハード ラスト・デイ」
「レッド・ライト」
「ムーンライズ・キングダム」
「つやのよる」

★近況
2月13日下北沢の書店「B&B」で、
メルマガ執筆陣である高橋ヨシキさん、木村綾子さんと
「メルマ旬報 映画班オフ会~高橋ヨシキ×柴尾英令×木村綾子
バレンタイン直前! 部屋で一人引きこもって見たい映画特集」
というイベントに出席してきました。

ものすごく楽しい記憶に残るイベントとなりました。
ぼくが紹介した作品は「恋はデジャヴ」、 「ワン・デイ」、
「 50回目のファースト・キス」、「ミッション: 8ミニッツ」、
「タイムトラベラー きのうからきた恋人」、
「バタフライ・エフェクト」、「タイム・アフター・タイム」、
「 エンド・オブ・ザ・ワールド」、「ラブ&ドラッグ」。

どれも本当にすばらしい作品なので、シネコンじゃなくてDVDでいいので、
ぜひご覧ください。


最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

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