« シネコン至上主義#9 | メイン | シネコン至上主義#11 »

【映画2013】シネコン至上主義#10

【クラウド アトラス】、【オズ はじまりの戦い】、【ジャンゴ 繋がれざる者】をオススメ。

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

試写会ではなく、都内のシネコンなどで普通のお客さんといっしょに
お金を払ってみた映画作品の推薦文です。
映画を映画館で見る理由となる3つの要素について五点満点で採点しています。
星が少なくてもお金を払って見るに足ると評価した映画だけを
紹介しています。
ここに紹介している作品は甲乙つけがたいものばかりです。
気になった作品なら、ぜひスクリーンでご覧になってください。

「スクリーン必然性」3D効果や臨場感、サウンドなど、
家庭のテレビ画面でなく、映画館で見る必然性を示します。
「インストール強度」人生の一部として、
自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。
「おっぱい指数」映画に必要な裸の女優の割合を
物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。

今月、紹介する3本は
「強面に見えたけど、みんな根はいい人じゃん」って映画ばかりです。

【クラウド アトラス】

スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★★★
おっぱい指数   ★★★

■推薦文
名もなきものの意志。声なきものの叫び。明日に語り継ぐ責任。
ことばを諦めない強さ。人を思い行動する気高さ。夢をみることの豊かさ。
あらためてその強さを知る愛。自由を求め歩き続ける勇気。
革命をためらわない心。
そんな無数の宝石が大波のように打ち寄せてくる。

映画に求めているもののほとんどがここにある。
今年いちばん興奮したアクションであり、今年いちばん陶酔したSFであり、
今年いちばん笑ったコメディであり、今年いちばん涙した恋愛劇であり、
今年いちばん勇気をもらった歴史劇であり、
今年いちばん脳を刺激した作品である。

あらゆるジャンルを通して、
最高の作品を「これはSFだ」と呼べる醍醐味を思い出したよ。
オプティミストの「スローターハウス5」といいたくなる。
すさまじいボリュームの「太陽系最後の日」でもあるだろう。
最高の映像でよみがえる「愛に時間を」ともいえる。
なにより体感する「果しなき流れの果に」だ。

映画を観る前に、
時代がちがう6つのエピソードを入れ子のように組み合わせた構造と聞いて
不安を覚えたのも事実だ。
だって、そういう構成でうまくいった映画はあまりないからね。
しかし、映画を見ていると途中からそんなことは気にならなくなる。
それどころか、その構成でしか生み出せない感情の大波が打ち寄せてくる。
3時間近い映画だけれど、どこかで彼らの人生をもっと味わいたくなる。

この映画のように、さまざまな時代と世界を渡り歩き、
時系列が素直じゃない映画はいろいろある。
「イントレランス」から「スローターハウス5」、「落下の王国」、
「めぐりあう時間たち」、「ファウンテン」、
「バンデットQ」なんかも思い出される。
映画がモンタージュからなる時間芸術である以上、
多くの人が挑みたくなる構成なのかもしれない。
そんな中で、これはまさに決定版というか、時間の大伽藍のようなドラマだった。
一度見たきりですべての要素を消化し、理解できるわけではない。
それでも伝わってくる直球のメッセージはたしかに受け止めた。

「マトリックス」を見て以来、ウォシャウスキー兄(姉)弟作品の中で、
何の躊躇もなく傑作といいきれるのは初めてだ。
それはやはり「パフューム」や「ラン・ローラ・ラン」の
トム・ティクヴァ監督の参加という大きな要素があったからかもしれない。

俳優たちは6つの時代に散りばめられ、
それぞれの時代で人種も性別も年齢も違う役を演じているが、
それに説得力をあたえているのが、
監督であるウォシャウスキー兄弟がラリー(兄)からラナ(姉)へと
性転換している事実かもしれないね。

ペ・ドゥナの存在感が桁外れにいい。
ウェイトレス用クローンとしての存在は
「空気人形」と近いモチーフに思えたけれど、
彼女のことば、彼女の怒り、彼女の愛情のすべてが
この映画のエモーションの源泉になっている。

映画の中で語られる情報量こそ多いものの、
じつはすばらしく明晰で芯の部分はわかりやすい映画だ。
ぎっしりとしているが、すべてがシンプルな主張のもとに
同じ方向を向いてそろっている。
ゲームでいえば「クロノトリガー」的というべきか。
錯綜する時間軸から少年ジャンプ的に
シンプルなテーマがくっきり浮びあがってくる。
ちなみにそのテーマは
「友情、努力、勝利」ならぬ「誇り、自由、革命」だったりする。

ただ、作者に意地悪さがないのが、創作としての評価を分けるところかもしれない。
ウォシャウスキーの映画は「マトリックス」の続編や
「Vフォー・ヴェンデッタ」のように、映画内の主張が一本調子で、
見せ場の創造こそ巧みだが、そこで描かれるテーマの展開が平板になりやすい。
だから、濃厚な絵と音で、力強く主張すればするほど、しらけてしまうこともある。
この映画にもその傾向があるけれど、
女優、ペ・ドゥナの存在感と、共同監督トム・ティクヴァのセンスが、
救いとなっている。

霊的な前世とかそういうものを信じられないおれだが、
ここで描かれる「輪廻転生」は、胸の中に自然に収められる。
この叙事詩が、心あるものが織りなす物語になっているからだ。

■採点理由
見せ場の多くは大きなスクリーンで見てほしいから
「スクリーン必然性」は★★★★★。
さまざまな情景が織りなすシンプルなテーマが胸に刻まれるから、
「インストール強度」は★★★★★。
ペ・ドゥナは例によってよく脱いでいるから「おっぱい指数」は★★★。


■以下ネタバレ
この映画をだめという人も多い。だめな人は二種類いる。
あまりにも構成要素が多すぎて把握できない人。
そして、把握した上でウォシャウスキー兄弟の
プリミティブなテーマに覚めてしまう人。

前者にとってはこの映画は縁がない。運が悪かったとしか言いようがない。
3時間、尿意を我慢しただけでも大したものだ。

しかし、後者の感覚は理解できる。
でも、だからといって「だめ」とはいえない。

自分にとってこの映画の白眉は、ペ・ドゥナが革命の意志に目覚めるその瞬間だ。
たとえ、東洋人特殊メークが違和感バリバリでも、
あるいは、そこにいたる伏線として「ソイレント・グリーン」を提示するなど
シンプルすぎものであったとしても。
意志が時代を超越する瞬間の醍醐味こそ、
生のめざすところという感覚がヴィヴィッドに描かれているからだ。

【オズ はじまりの戦い】

スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★

■推薦文
かつて「スパイダーマン」トリロジーで、市民と英雄、虚像と勇気、
そして持てるものの責任を描いたサム・ライミが
古典的ファンタジーの世界を舞台に、
そのテーマをいまいちど問い直した愛おしい作品だ。
そして、「オズの魔法使い」への愛情にも満ちている。

サム・ライミが「オズの魔法使い」の前日譚を撮ると聞いて、
想像もつかなかったところはあるけれど、
最初から最後までこれは正しいサム・ライミ映画だった。
構造としては、「死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット」であり、
その主張は「スパイダーマン2」と等価である。

もちろん、展開上のご都合主義もあるし、
監督の前作「スペル」みたいに、ねちっこく撮ってもいいとは思ったが、
子どもと楽しむディズニー映画として、絶妙なバランスに落とし込んでいる。

最初から最後まで女たらしでいい加減でスノッブな田舎ハンサムを
ジェームズ・フランコが演じるというのが最高だ。
スパイダーマンのピーター・パーカーのような
初々しさと気高さはないけれど、
「オズの魔法使い」へのつながりを考えると、唯一無二の配役だ。

三人の魔女を演じるミシェル・ウィリアムズ、
レイチェル・ワイズ、ミラ・クニスも最高。
アイドル的な女優を使うわけではなく、
演技を評価された女優を起用し、
それぞれのキャラクターをきちんと考えた配役としている。

キャラクターでいえば、ぼくの周囲のおじさんたちは、
陶器の少女(チャイナ・ガール)に恋をしている。
たしかにCGが生み出したキャラクターとしては、最高の美少女ではないか。
かつて、キルスティン・ダンスト連続でヒロインにしたサム・ライミなのに、
この映画に出てくる女性たちはみんな魅力的で美しい。

■採点理由
これはIMAX 3Dで観るべき映像世界なので「スクリーン必然性」は★★★★★。
自分のなかにインストールされているオズがあれば、にやりとするが、
まっさらの状態でこちらから見ても大丈夫なので「インストール強度」は★★★。
おじさんも胸をときめかせる女優の魅力があるけど、
さすがのディズニー映画。「おっぱい指数」は★。

■以下ネタバレ
映画冒頭に出てくる車椅子の少女(ジョーイ・キング)が
チャイナ・ガールの声優をやり、
助手のフランク(ザック・ブラフ)が猿のフィンリーの声優、
さらにはミシェル・ウィリアムズが、カンザスとオズの両者で出てくるなど、
なにげないキャスティングがぞくぞくしたよ。

ミラ・クニスが演じた魔女が、
悪い魔女になってしまった経緯については、心を痛めました。





【ジャンゴ 繋がれざる者】

スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★★
おっぱい指数   ★★


■推薦文
最高に血なまぐさいが、最高に晴れやかなマカロニウエスタン。
誇りとか名分とかメンツとか、きっちり尊重してくれてる話なので、
緊張とカタルシスのバランスが全編、絶妙です。

先日、友人宅のホームシアターで、ひさしぶりの「シルバラード」を見て、
これも黒人がガンマンのウェスタンだったかと、記憶をリフレッシュした。
こちらにも酒場を追い出されるシーンがある。
ほかにもメル・ブルックスのパロディ・ウェスタンとしての
「ブレージングサドル」は黒人保安官の映画だったよね。

監督の前作「イングロリアス・バスターズ」が
歴史をベースにした戦争アクションというわけではなく、
さまざまな戦争映画と同等に、歴史さえもサンプリング要素として、
再構成した映画であるように、
「ジャンゴ」も本流ウェスタンとは違うし、
歴史的にもありえざるフィクションだ。
しかし、その映画的カタルシスは最高だし、
エモーションの連鎖には、胸の奥の熱いものを引っぱり出されるようだ。
作中で宣言しているように、
これはジークフリート神話をベースにした神話の再構成なのだ。
虐げられたものが、理不尽に奪われたものを取り戻す普遍的なドラマなのだ。

登場する役者たちがみんないきいきしているのがいいね。
クリストフ・ヴァルツの飄々とした演技の彼方から見せてくれる熱情。
ジェイミー・フォックスの一途さ、
悪役を嬉々として演じるディカプリオ、
最悪の黒人ヒールを縦横無尽に演じるサミュエル・L・ジャクソン。

もちろん、すさまじい数の人間が殺される。
それを責める評論もあるけれど、
死んだ数なら、テレビの時代劇一話分で斬殺される悪人の数より
少ないくらいじゃないかな。
血糊の量はシリーズぜんぶより多いだろうけど……。

ぼくが心底感心したのは、ディカプリオとヴァルツとの対決で
クローズアップされるのが、腕っ節の強さでも、銃の速さでも、
手下の多さでもなく、人としての誇りのありかだってことだ。
だからこの虚構まみれの物語、血まみれの映像の中から、
純白の気高さが立ちのぼってくるのだ。
それは最高にかっこいいことだし、
そのかっこよさが映画を観る醍醐味なのだろう。

■採点理由
この映画に対する賛歌を劇場で見ない理由がわからないから
「スクリーン必然性」は★★★★★。
圧倒的に楽しいが、楽しすぎるために「インストール強度」は★★★。
おっぱいもぬかりなく出てるんだけど、
タランティーノの映画のおっぱいって、あんまりエロくないんだよな。
だから「おっぱい指数」は★★。


■以下ネタバレ
あとで考えれば、ブルームヒルダ救出のために、
歯科医キング・シュルツが立てた作戦はリスクも多く、
それでいいのかという気もしたけれど、
それこそが、作品世界の説得力になるのだろう。
現実の歴史を考えれば、南北戦争前のこの時代、
解放されたあのふたりが真の自由と人間らしさを
謳歌する場所はないのだから。


★今回とりあげなかった映画
おすすめの映画をなるべく紹介したいのですが、
今回、いろんな理由で紹介しなかった映画は以下のものです。

「ジャックと天空の巨人」(アメリカにて)
「ヒッチコック」(機内映画にて)
「フライト」
「愛、ラムール」
「野蛮なやつら/SAVAGES」
「プラチナデータ」
「キャビン」(映画祭にて)


★近況というか、言い訳
今回、とりあげなかった映画ですが、どれもすばらしい作品ばかりです。
是非映画館でご覧ください。
とりわけ、「フライト」、「愛、ラムール」については
映画としてのクオリティがすごいのですが、
自分が本当に好きではないという点で、
「野蛮なやつら/SAVAGES」については、クライマックスの処理に疑問があったこと、
「キャビン」については、どう書いたってネタバレになっちゃうので、避けました。

最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

« シネコン至上主義#9 | メイン | シネコン至上主義#11 »

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

                

最近のエントリー

カウンターetc

人気ブログランキング - ゲームの王道 atom rss2.0
total カウンタ:today カウンタ:yesterday カウンタ

Pagerank/ページランク

人気記事ランキング

Google Adsense