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【映画2013】シネコン至上主義#15

【オブリビオン】、【はじまりのみち】、【プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命】、【百年の時計】、【言の葉の庭】をオススメ。

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

お金を払ってみた映画作品の推薦文です。映画を映画館で見る理由となる3つの要素について五点満点で採点しています。星が少なくてもお金を払って見るに足ると評価した映画だけを紹介しています。ここに紹介している作品は甲乙つけがたいものばかりです。気になった作品があれば、ぜひスクリーンでご覧になってください。

「スクリーン必然性」3D効果や臨場感、サウンドなど、家庭のテレビ画面でなく、映画館で見る必然性を示します。
「インストール強度」人生の一部として、自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。
「おっぱい指数」映画に必要な裸の女優の割合を物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。

ゴールデンウィークが終わったいま、すばらしい映画が多すぎです。楽しいけれど、たいへんです。




【オブリビオン】


スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★★
おっぱい指数   ★★★

■推薦文
その情景。その詩情。その寂寥。破滅後の地球を描いたこの作品はかなりの水準に達している。破滅後の世界の仕組みをきちんと作りこみ、そこに対峙する男の姿を過剰なエモーションで語ることなく、観客に任せた形で端整に描いたことは称賛すべきだ。

トム・クルーズ主演のSF映画といえば、「マイノリティ・リポート」、「宇宙戦争」と名作が多いが、「オブリビオン」もそんな作品だ。

「猿の惑星」、「2001年 宇宙の旅」、「インデペンデンス・デイ」、「WALL・E/ウォーリー」など、先行する作品との相似も指摘されるだろう。ただ、それはかなり意図的な引用で、作者のSF映画に対する敬意と憧憬が感じられる。

人類が破滅したあとの地球という話は、もともと大好物なのだが、それは無慈悲な大量死を越えたあとのノスタルジーと孤独が描かれるからだ。「オブリビオン」はそれをきっちり果たした上に、映画館を出たあとの余韻がただならぬ作品になっている。

これ以上、なにを書いてもネタばれになってしまう。とにかく情報をシャットアウトして、映画館へ。そして、あの光景を歩いてほしい。


■採点理由
とにかく映像とサウンドがすばらしい。可能なことならIMAXなど、スペシャルなスクリーンで見たいから、「スクリーン必然性」は★★★★★。なにか、学生のころに読んだキレのいいSF短編小説の味わいがある、そしてその情景があとをひくから「インストール強度」は★★★★。コマ送りで映像を確認できたら、いろいろ見られるだろうけど、「おっぱい指数」は★★★ってところかな。


■以下ネタばれ
冒頭の破壊された月は衝撃的だった。とにかく、空間の中の天体や巨大建造物の描写がすばらしい。多くのシーンがアイスランドで撮影されたらしいが、文明が絶え、むき出しになった地球の肌が、心情に迫ってくる。

世界の秘密がすこしずつ明らかになるにつれ、自分と世界がいかに関わってきたか、その残酷な真相が見えてくる。これは本当にたくみな作品だと思った。ひとりの男をめぐる二人の女の話でもあるが、明らかになった過去により、これがあまりにもせつない愛の物語であることがわかる。映画のなかのひとつひとつのシーンをふりかえると、たまんなくなるよね。

【はじまりのみち】

スクリーン必然性 ★★★★ インストール強度 ★★★★ おっぱい指数   ★

■推薦文
こんなにシンプルな話なのに、なぜ心を揺さぶられるのだろう。子供のころなにかになりたいと強く願っていたひと。時間と環境に挫折したことのあるひと。そして、母を持つひと。その気持ちに直接、届くような力強い創作の凱歌。木下恵介作品を見たことがなくてもすぐ劇場へいこう。

映画を見終えたあと、胸がしめつけられるような気持ちになった。創作の凱歌。親子であることの圧倒的な強さ。家族という豊穣。静かなる激情を正面から描いている。

映画「陸軍」の描写が軍部の反感をかい、撮影所で映画が撮れなくなった木下恵介監督が疎開のために母親をリアカーに乗せ、過酷な山越えをしたという実話をもとにしている。映画で描かれるのもわずか数日のことだ。

監督は「映画 クレヨンしんちゃん」シリーズ、「河童のクゥと夏休み」、「カラフル」など、アニメの名作をつくってきた原恵一。実写映画は、これが初めてだが、アニメの監督ってことはほとんど忘れて、映画を見ていた。

創作を支える内面の力とは、"絵"にはなりにくいことだが、全編にあふれるのは、不屈の内面の力である。そして、すさまじいクライマックスでは、ただならぬ興奮と感動があふれてくる。これを見ないのは損としかいえない。

木下恵介の作品を知らない若い人にも、予備知識なしで見てほしい。


■採点理由
木下恵介監督の作品がいくつも引用されている。これを見る最適の環境はお茶の間ではなくて、映画館の大スクリーンだろう。だから、「スクリーン必然性」は★★★★。どんな逆境の中でも作りたいという気持ちがある人なら、その思いがバージョンアップするから「インストール強度」は★★★★。「おっぱい指数」が★なのは、当然ですね。


■以下ネタばれ
これ、ほんとにずるいなぁと思ったのは、映画「陸軍」のラストシーンを延々と映すあたりだよ。息子が母のためにする山越えと、その鏡像のような、母が息子を見送る出征シーンを見せ、さらには、クライマックスの木下恵介名場面集。ていねいに撮られた作品でありながら、映画の時系列の中でしか描けないメタ構造になっているのには、驚いた。そんな中で、大原麗子が最後につぶやいたひとこと。あれは、ほんとうにすばらしかったね。

【プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命】

スクリーン必然性 ★★★★ インストール強度 ★★★ おっぱい指数   ★★

■推薦文
流転する因果のサガは、たまらないね。こんなにおもしろいとは思わなかった。すべてのことってちょっとした流れの中で、自分の意志をどう決めるかなんだね。

ストーリーを注視すれば、クラシックな因果の叙事詩である。まるでトマス・ハーディの「ダーバヴィル家のテス」や「日陰者ジュード」のような筋運びというべきか、社会のどこかでけなげに生きてきた男や女が、ふとした運命のいたずらでレールを外れていく。さらには、その因果が世代をまたいでしまう。

デレク・シアンフランス監督といえば、夫婦が崩壊するプロセスを生々しい形で見せた「ブルーバレンタイン」の監督だが、つぎになにが起こるかわからないアドリブ感あふれる前作は、ストーリーというより、シーンの映画だったが、今回はキャラクターによるストーリーを語りやすい構成になっている。自分は、今回のほうが好きだ。

映画の舞台、ニューヨーク州スケネクタディは「松林を越えた場所」を意味するアメリカ原住民のことば。つまり、プレイス・ビヨンド・ザ・パインズなのだが、そのなかで「ビヨンド」の一語がきいている。負の連鎖を越えた場所へ行く意志が愛おしい。


■採点理由
めくるめく運命の万華鏡を、自分の一部のように感じるために映画館は最適の場所だから「スクリーン必然性」は★★★★。えもいわれぬ感動はあるものの、この社会と自分の社会の違いも同時に感じられてしまうから、「インストール強度」は★★★。ベッドシーンはあるけど事後でノー乳首露出。むしろ登場時のノーブラの乳首ポチのほうが印象的な「おっぱい指数」は★★。


■以下ネタばれ
冒頭のバイクスタントに出向くライアン・ゴズリングの長回しと、ラストシーンで買ったばかりのバイクに乗って彼方へと旅立つ少年の姿。継ぐもの、継がざるもののそれぞれが印象的だったし、警官のなかにある潔癖さと狡猾さの両者など、他人ごとではない。人生のちょっとした舵取りが、自分と人に影響をあたえる長いスパンを描く映画はたまらないね。

【百年の時計】

スクリーン必然性 ★★★ インストール強度 ★★★★ おっぱい指数   ★

■推薦文
金子修介監督が大林宣彦監督の後継者となり、ご当地メタ映画製作への歩を進めていることが、はっきりわかった。

高松琴平電鉄(ことでん)開業100周年を記念して、オール香川ロケ撮影で制作された映画。香川出身の老アーティストが、高松で回顧展を開くにあたり、自分の作品のモチーフとなった、古い懐中時計をくれた女性を探そうとする。そこで明らかになる若き日の秘密とは……。

序盤ではミッキー・カーチス演じる老アーティストはどこか安っぽいし、木南晴夏はいまひとつしっくりこなかったけれど、クライマックスの迫力が圧倒的で押し切られてしまった。

これに似た感触の映画はなんだろうと思っていた。ひとつは大林宣彦の「この空の花 -長岡花火物語」、「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語」。洋画では、「ヒューゴの不思議な発明」が近いんじゃないかな。若者と老創作者との遭遇、創作者の過去に秘められた秘話。そして、現在とのコネクションと回想。そんなものが、幻想のクライマックスとともに物語られる。

土地とは何か、歴史とは何か、アートとはなにかに対するひとつの答えを見せてくれるような印象だった。


■採点理由
単純なご当地映画ではない幻想を堪能するために「スクリーン必然性」は、★★★。想像もしない形であとを引く映画だから「インストール強度」は★★★★。金子修介映画にしては、どきっとする色香のあるシーンが足りないので、「おっぱい指数」は★。でも、中村ゆりはすごくよかった。


■以下ネタバレ
最後のことでんを使ったインスタレーションは、現実的にはどういうイベントになっていたのだろうと、あれこれ思いつつ、そんなものをぶっちぎる感動があったのは、ただ、老アーティストの回想のみならず、時計に関わった人々の思いもまとめて描いていたからだろう。

【言の葉の庭】

スクリーン必然性 ★★★★ インストール強度 ★★★ おっぱい指数   ★

■推薦文
新海誠監督の鮮烈なアニメーション作品。

雨と慕情の物語。雨が降るとき、コンクリートの都会は天につながる自然に変わる。そのことをみずみずしく緻密な映像で表現している。

新宿御苑の一角を人生の中で寄り道する時期だからこそ見つかるシェルターとして、年齢が違う男と女のかなわぬ距離を縮める場として。それぞれの静かなる成長を見せてくれる。

あの美しい映像は、世界がくたびれて見飽きたものではなく、まだまだ知らない新鮮なものがあるという実感なのだろう。それは恋を知り、未来を不安に思う高校1年生の男の子にとってもそうであり、世界からいちど阻害され、ふたたび世界を取り戻すことになる女性にとってもそうなのだ。

都会のなかでふとした機会に見つかる自然に寄り道したことがある。そんな思いがある人には、ぜひ見てほしい作品だ。

■採点理由
この映像を最高の環境で楽しむためには、映画館しかないよね。だから、「スクリーン必然性」は★★★★。雨の降る街っていろんなことが起きるのを思い出させてくれる「インストール強度」は★★★。足に関連するあるシーンはなんともセクシーだったけど、「おっぱい指数」そのものは★。


■以下ネタバレ
エンディングがほろ苦くて、それでも未来を向いているのがチャーミングだったね。人生って、自分のことや環境のことで、立ち止まる場面が多いけど、そういうときだからこそ、あらたな人との出会いがあったり、ドラマが生まれる可能性があるんだよね。映画を見ていて、雨の匂いを思い出しました。

★今回とりあげなかった映画

おすすめの映画をなるべく紹介したいのですが、今回、いろんな理由で紹介しなかった映画は以下のものです。

【イノセント・ガーデン】アトモスフィアは最高だけど、登場人物全員がエキセントリックすぎた。
【グランド・マスター】イップ・マンはドニー・イェンがインストールされちゃったからなぁ。トニー・レオンってあんまり強そうじゃないし。
【県庁おもてなし課】有川浩原作で、岡田惠和脚本だから、一定のクオリティはあると思いました。
【ポゼッション】新味はないけれど、サム・ライミがプロデュースしただけはある楽しいホラー。
【バレット】ひさしぶりのウォルター・ヒル監督。不器用なふたりのバディムービーとしてもいいが、クライマックスのあれがウォルター・ヒルらしくて最高。
【リアル 完全なる首長竜の日】中盤のツイストまでは、ものすごく楽しんだけど、CGを使ったあれの演出に困っちゃった。

★近況
あれこれ、忙しい中、糖質制限ダイエットを始めたのですが、これがすばらしくよくて、毎朝、体重計にのるのが楽しみです。長年、いろんなダイエットとリバウンドの連続で、痩せることを諦めかけた人生ですが、ストレスが少なくて、成果が出るのがいいですね。

最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

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