その「とき」、あの「こと」をする「もの」
自分には、
それほど強いこだわりはないと、
思っていた。
ちゃらんぽらんに
適当にやっていると思っていた。
だが、そうではないらしい。
とくに自分で文章を書くとき、
その文字づかいに関して、
かなりのこだわりがあるみたいだ。
最近うちのBBSでは
文字フォントの話題がでているのだが、
そのレスをつけているうちに、
はっきり気がついた。
「とき」、「こと」、「もの」、「ぼく」、「やつ」などは
絶対に、ひらく(ひらがなで書く)!
「時」、「事」、「物・者」、「僕」、「奴」なんて、
指が裂けても書くもんかという
こだわりがある!
「その時、僕は分かった事があります。
奴が食べる物は、おぞましい物なのです!」
なんて、書いたとたん、
おぞましい学習をしたIMEの辞書を
再インストールしたいくらいの
こだわりがあるのだ。
まあ、この手のネタは
ライター同士でよく話題になるのだが、
ぼくは断固、「ひらく派」だ。
ゲームの新作を作るたびに、
顔合わせした
新しいスタッフとも一度はこの話題がでる。
いろいろと説明もする。
全体の文字バランスで、
読者やユーザーに注目してほしい部分を
あえて漢字にして、
そのほかは極力、ひらいているんだとか……。
「僕」は「下僕」の「僕」で、
「しもべ」と誤読されるといやだからとか……。
「時の旅人」などで「時間」を意味する場合の「時」と、
「そのとき」などの指示代名詞とともに使う「とき」を
区別したいからだとか……。
そんな、わけのわからんことを
真顔で説明しているうちに
とりあえず、みんな、わかったような顔をしてくれる。
ありがたいことだ。
でも、正直にいっちゃおう。
いろいろと理屈はございますが、
ぜんぶ、ぼくの文体なだけです。
それ以上でも以下でもありません。
有名無名を問わず、
いろんな人が書いている文章で、
「そのとき」を「その時」と書いてあっても、
じつはそんなに気にならない。
人に強制するつもりは
さらさらないのだ。
ただ、なにより見苦しいのは、漢字の用法など、
文字づかいの不統一だ。
あるところで、「僕が好きな事」と書いておきながら、
すぐそばで「ぼくが好きなこと」と書くのは、
みっともないことだ。
結局、ぼくは
「とき・こと・もの」をひらくというルールを
生涯のどこかで決め、
そのルールに準拠して文章を書いているだけなんだろう。
小学館と学研と……
出版社や担当編集者によって、
ルールはいろいろある。
たとえば、「小学三年生」など、
小学館の学年誌では、
「人々」を「人びと」、
「山々」を「山やま」と書くのがルールだった。
また、学研の編集者で、
連用形でつながるふたつ目の動詞はひらくのがルールだと、
いう人もいた。
例1:使い切る→使いきる
例2:殺し始める→殺しはじめる
また、
「!(あまだれ・感嘆符)」や「?(疑問符)」のあとに、
全角のスペースを入れることは、
よく知られたルールだろう。
例:「ばか! 自分の名前を忘れたのか」
それに「・・・(中黒*3)」でも「...(ピリオド*3)」でもなく、
「……(三点リーダー*2)」を使うのも、
わりと常識的なルール。
全体のルールを統一させて、
書いた文章を読者に楽しみやすくさせるという点では、
表記の用法が、
テーブルマナーに似ているというのは、
乱暴な比喩だろうか……。
全体の文章に占める漢字の量が
多かろうが、少なかろうが、
わかってる人なら、名文は書ける。
ただ、経験則からいって、
現代の人間が書く文章の中で、
漢字の量が多いやつに、ろくなものは、ないっす。
「与える」とか「出来る」とか「凄く」とか、
そんな漢字がちりばめられている文章は、
読む前から、「うげ」って感じ。
ただでさえ、デフォルト状態のワープロの辞書は、
必要以上に漢字変換しようとするから、注意が必要だ。
さて、自分の文章がうまいといいきるほど、
ぼくは自信家じゃない。
そんな経験則から、
とりあえず、ひらくようにしているのかもしれない。
雑誌とゲームとパソコンと……
それから、媒体によって、文体や表記も変わる。
ぼくも
ゲームシナリオで使う漢字の種類と、
ウェブサイトで使う漢字の種類、
印刷媒体で使う漢字の種類とは
ぜんぜん違う。
RPGでは
画面に表示される文字フォントが
へなちょこだと、
内容を変えない範囲で文章を変えることもよくある。
それにウェブで「りきむ」を「力む」と書くと、
カタカナ&ひらがなまじりの「カむ」と誤読されそうだから、
「ふんばる」とか、表現を変えたりする。
文体の変化という点で、
ウェブと印刷媒体で顕著なのは、
「、(読点)」の量だろう。
コンピュータの画面上で
文字を読みやすくしようとして、
ついつい多めに「、」を入力しちゃうのだ。
最終的にユーザーや読者の目に飛びこむとき、
どんな印象をあたえるのかってのは、
すごく気になる。
こりゃ、なんか、こだわりの話というよりは、
文字づかいに神経質な話って感じだね。
まぁ、ゲームのシナリオを書くときも
そんなことで、うんうん、うなっているわけですよ。
大勢に影響はないのにね……。