二日酔い
本日は打ち合わせを少々。
名作は勉強するものなのか
南原順著
「ゲームクリエイター完全養成マニュアル(二見書房)」を読む。
もともと、
「ゲームデザイナー入門」系の本を読むのは趣味なのだが、
このジャンルには、トンデモ本も多い。
RPGの作り方と称して、
「森=歩きにくい。木が生えていて、森の怪物が出る」
「沼=歩きにくい。沼の怪物が出る」
なんて、ことを
数ページを費やして、書いてる本だってあるくらい。
そういう中で、
この本はわりとていねいに書かれていて、
好感を持ったのだが……。
巻末にある
「参考資料 君の右脳を刺激する名作たち」って、
やつを読んで、げんなり。
またかって感じなのだ。
どうして、ゲームクリエイター入門には、
この手のよけいなお世話の作品ガイドや
ノーラン・ブッシュネルからはじまる
ゲームの歴史がパセリのようについてくるんだろう。
作品ガイドに紹介されている映画、小説、漫画にしても、
1961年生まれの
著者の趣味で集めたとしか思えない作品ばかり。
日本映画で紹介されている作品は、
「七人の侍」、「用心棒」、「天国と地獄」、
「ニッポン無責任時代」、「仁義なき戦い」、
「ギターを持った渡り鳥」、「新幹線大爆破」、
「兵隊やくざ」、「櫻の園」、「香港パラダイス」。
うーん。
小説はもっとすごい。
「女性キャラと恋愛ドラマを作るときの参考となる作品」として、
「金色夜叉」をまず、紹介。
シミュレーション小説として
「首都消失」や
日本SF史に残るタイムマシン小説の傑作として
「マイナス・ゼロ」、
実在の人物を組み合わせてドラマを作る例として
「警視庁草子」を
紹介。
うーーーーーーん。
たしかに、
どれもおもしろけいどさ。
「デューン砂の惑星」を
「SF史上最高傑作。(中略)
異世界もののゲームを作ろうと思うのなら、
これくらい読んでおかないと、
異世界物業界の先人たちと
おなじ土俵で勝負はできないと思ったほうがよい。
逆にいうと、これを読んでさえいれば、
間違いはない。」だって。
うーーーーーーーーーん。
「デューン」がSF史上最高傑作ですか。
そこまで断言するのもすごいけど、
異世界物業界とはすごい業界があったものだ。
ちなみに、
おれも「異世界物業界の先人」なのかなぁ……?
とにかく、
最初にも書いたように、
この本は実体験に基づき、きわめて誠実に書かれた、
読むべきところの多い本ではある。
しかし、
この作品ガイドはいくらなんでも、
せつなすぎるのだ。
まず、著者はいい人なんだろう。
いい人すぎて、
自分の本棚をさらす恥ずかしさがないのだ。
本読み、映画好きとして、
この作品リストと、そこに書かれたコメントは
恥ずかしすぎる。
クリエイターというコックにとって、
本棚は冷蔵庫であり、
そこを無防備にさらすという感覚が
耐えられない。
自分の冷蔵庫をのぞかれるのは
恥ずかしいことだし、
人に冷蔵庫の中身を自慢するような真似は、
あまりにも、せつない。
その自慢にしたって、
「デューン」を
SF史上最高傑作というレベルだぜ。
ぼくも「デューン」くらいは
シリーズぜんぶ読んでるけどさ。
これを「SFの最高傑作」とか
「これさえ読んでおけば、間違いはない」と
無防備に書ける神経はないなぁ。
ちなみに、ぼくと同じかそれ以上の世代の人と
いまどきのゲームクリエイターは
黒澤明も観ていないという話をすることがある。
ただ、それは娯楽提供業者として、
あたりまえの常識がないという話で、
勉強のために、
いまから、クロサワを観ろという話ではない。
クロサワの全作品くらい、
エンターテインメントに敏感な人間なら、
観ているのが、あたりまえなのだ。
だから、「クロサワくらい観ておけ」と
いわれた時点で、そいつはかなりアウト。
勉強のために娯楽作品を観ることほど、
無粋なことはないし、
作者に対して失礼なことはない。
10代までに豊かな娯楽体験がないやつは、
かなりきびしい。
人生には、10代でしか味わえない感動がある。
20代をすぎて、勉強のため、クロサワの全作品を観て、
本を読んで、その映像技法をお勉強。
開発現場にそのやり方を押しつけている
クリエイターだって、実在する。
お勉強して、身につけたものは、役に立たない。
だって、
心から好きじゃないことを、いくらやっても、
身につかないのはあたりまえだもの。
ちくしょー。この作品おもしろいぜ。
まるで魔法の力みたいだぜ。
おもしろすぎるから、どこがおもしろいのか
その魔法の秘密を知りたいぜ。
そんなやつじゃないと、だめだよね。
お勉強じゃなくて好奇心。
いろいろなものを、
好きになれる力、おもしろがれる能力が
まず、クリエイターには必要だ。
何歳になっても、新しい興味がわき、
あらたに好きなものを発見する力を
維持できなければ、終わっちゃう。
だから、まぁ、
この手のゲームデザイナー入門本にある
必読書リストなんて、
ほんとにクリエイターの能力があるやつには、
よけいなお世話だし、
これでお勉強したやつが、業界に入ってくることほど、
迷惑なことはない。
まぁ、冷蔵庫の例も出したけど、
おれはこれだけ本を読み、映画を観てるんだって、
自慢したいという意図があるんなら、
ご愁傷さまというしかないけどね。