DIARY:2000 MAY.11〜20


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2000年5月11日(木)

AIBO誕生!
2000年2月刊行予定だった
アスキーの「AIBO誕生! AIBO OFFICIAL BOOK」が
いまごろやっと、宅急便でとどく。これは代引きで購入。

インタビュー中心の構成で、
情報として、びっくり! てなものはないけれど、
たくさんの開発者が顔をだし、
犬型ロボットとおじさんの写真満載で、なかなか楽しい本。

おれのAIBO熱はやや冷め気味なのだが、
ひさしぶりに、我が家のAIBO、ミチゾーと
とことん、遊んでやろうかとも思う。

そういえば、AIBOの公式(?)キャリングバッグ
3種類発売される。
いい季節だから、お出かけしましょうか。

「噂」
「だれも書かなかった「ソニープレステ2」のあきれた製造現場」なる
見出しにつられて、
政界出版社の雑誌「噂 ウラの裏」を購入。

ソニー木更津工場で、
日系ブラジル人350人が働いているという話に
外国人労働者に関する風評を添えて、一丁上がり。

まるで、あきれた話ではない。


2000年5月12日(金)

ひさびさの神楽坂
飯田橋で
「月刊 New Type」のY野副編集長と
会食というより、……酒。
町で酒を飲むのも、ひさしぶりだなぁ。

書店「深夜プラスワン」で、待ち合わせをしたあと、
「どこか、いい店を知ってる?」と、聞けば、
「えーっと、このへんに……。あれ!? 店がなくなってますね」
と、Y野くん。

ふたりとも、この界隈で仕事をしたのは、遠いむかし。
なじみの店がなくなり、
町が変わってしまったのも、あたりまえか……。

ふと、自分が「レナス2」を作っていたころに
常食してた「メトロ」のカレーを、食いたくなったりする。
飯田橋版センチメンタル・ジャーニーか。

ところで、「メトロ」って、まだあるよね?

結局、腰をおちつけたのは、大手居酒屋チェーン店。
あれこれ講釈をたれさせていただき、
オフレコな話をあれこれ聞かせてもらう。


2000年5月13日(土)

欧州版「レガイア伝説」
書き忘れていたが、
メールで「レガイア伝説」欧州版の
完成&発売予定日の連絡をいただいた。

英・仏語版は5月26日発売で
そのほかの伊・西・独語版は6月中発売の予定だそうだ。

日本版発売から、すでに1年半以上。
自分としては、過去の作品となっているだけに
なんだか、へんてこな気分……。

まぁ、いいや。
ヨーロッパのRPGファンは、きちんと購入するように!!


2000年5月14日(日)

赤坂豪雨
赤坂で打ち合わせを終え、外に出たとたん、
突然の雷雨で、うひゃああ!

いっしょに外に出たスタッフのおふたりと一緒に
近くの中華料理店に雨宿り。

あれこれ話して、「人に歴史あり」を実感したころ、
雨あがる。


2000年5月15日(月)

みょうに苦手なアプリケーション
「レナス」、「レナス2」、「レガイア伝説」と、
シナリオや仕様を
NECのワープロ専用機「文豪」シリーズで作ってきた。

地上にインターネットとやらが出現するまでは、
パソコンなんて中途半端な機械で、できることは、
ゲーム専用機とワープロ専用機があれば、
十分だといいつづけてきた。

実際、それはまちがっていたとは思わない。

そんなおれの根性のせいか、
いまになっても苦手なアプリケーションがある。
つまり、「Word」などのワープロである。
ほんとにどうしようもなく、使っていて、いらつくのだ。

現在、テキストを打つ際は、「秀丸」エディターを常用し、
サイトの更新には「ホームページ・ビルダー」を使っている。
表を作るなら「Excel」だ。
どれも、使いこなしているつもりではいる。

だが、問題は「Word」だ。
最近、印刷しなければならないものが増えてきたので、
仕方なく使っているが、どうも、ぴんとこない。

コピー&ペーストでテキストを流しこみ、
「はい、印刷」くらいなら、当然できる。

しかし、紙の仕様書においても閲覧性の高さは重要だ。
読みやすく立体的にレイアウトされた仕様書は、
それだけで、伝達バグを減らすものである。

そこで、フォントや文字サイズをあれこれ変えたり、
インデントを調整したり、段組にしたり、
表を入れたりしたいわけだ。

ところが、「Word」ってやつは、
思ったように、動いてくれない。

なんで末尾の一文字を消しただけで、
段落ぜんぶのフォントが変わっちまうんだよ。

段組の途中で、かってにずれていくのはどういうわけだ。

表に網掛けをするマクロを作っているときに、
罫線までかってにいじらないでくれ。

きっと解決法はあるんだろうけど、
よくわからねーよ。

もともと英語のドキュメント用のワープロアプリであることが
問題なのかもしれない。

まず、日本の編集や印刷の現場で使っている用語と
ヘルプで使っている用語が違う。
たとえば、英語の「パラグラフ」と日本語の「段落」は
同意語ではない。

また、メニューの階層が
日本語印刷の優先順位と微妙に違うのも、
問題はそのあたりにあるんだろう。

いろんな意味で
ワープロ専用機のほうが使いやすかった。

パソコンで使える「文豪」エミュレータってないのかな?

先日もA4で50ページくらいの仕様書をまとめたのだが、
レイアウト部分で、じりじりしまくり……。

やっぱり「一太郎」のほうが、いいんでしょうか……。

いや、おれの場合、すでにむきになっている。
意地でもWordの達人になってやるって気分だ。
ばかやろー。負けないぞ!


2000年5月16日(火)

VAIO新製品大量発表
まったくSONYさんったら、
人がPCを買いかえて2ヶ月というタイミングで、
一気に素敵な製品群を大量発表してくださるとは、
ほんとに、い・け・ず……。

今回は記者発表つきで、
大々的にラインナップを発表したVAIOシリーズだが、
ノートもデスクトップもハイエンド機は
すべてWindows2000プリインストールになった模様。

記者発表の席上では、マイクロソフトの成毛社長が
コンシューマPCにW2000は絶好なんて、
前社長の言をまたまた覆すような発表をしたようだが、
そんなことは、まぁ、どうでもいい。

SONYは民生用PCメーカーの中で、
もっとも熱心にW2000サポートにとりくんできた会社であり、
いままで、VAIOを4台買ったユーザーとしても
プリインストールソフト群にシステムリソースを消尽される
VAIOという製品のOSに
W98は不向きであることは明白だからね。

それにしても……。
もう二世代くらいさき、あと半年後には、
デスクトップ機を買いかえたい欲が高まる模様と、
自分予報。


2000年5月17日(水)

「ゲーム雑誌のカラクリ」
えええええええっ!
「ファミ通」のクロスレビューって、
評論とか批評とまったく別物と考えるべきものです。(P86より)」
とは、知らなかったよ、おれ。

と、まぁ「目からウロコ」のネタもあり、
楽しく読めたのが、キルタイムコミュニケーション刊、
大澤良貴著「ゲーム雑誌のカラクリ」だ。

筆者は「ファミ通」のとなり(?)にある「ログイン」編集部で
7年間、契約社員として働いてきた方。

最近は専門学校にも、ゲームライター科とやらがあり、
ゲームライターも「憧れの職業」らしき時代(当社推定)。
そんな時代だから、こういう書籍も出てくるのかな……。

高卒で業界入りした筆者は'73年生まれだが、
'62年生まれ、1浪&2年留年、大学中退の自分とは、
業界入りした時代は、3年程度の誤差である。

満足に使えるビデオプリンターがなく、
ゲームの画面撮影がたいへんだった時代を知ってる人、
つまり、同世代だ。

本書からは現場の空気がみずみずしく伝わってくる。
著者ならではのモラルや問題意識は、よく理解できる。
それが同世代ってことだ。

そのぶん、耳あたらしいネタがないというのも、事実だけど、
それはまぁ、ぼくの立場だと、しょうがないか。

おもしろい本だけに、気になったところもある。

まず、全体のページ構成がまずい。
せっかくゲーム雑誌クロスレビューなんて
すごいことをやってるのに、
それが本の内側に埋もれている。
それだけで購買欲を刺激するコンテンツなんだから、
巻頭や巻末など目立つところに置けばいいのに……。

また、一般雑誌と対比した上での、
ゲーム誌の特異性があまり描かれていない。
これは専門誌一筋の筆者であるから、しかたのないところか。
なにより「ファミ通」は他に類をみない特異な雑誌である。
週刊化当時、あれだけの4色ページ数、製版点数を
週刊でだす雑誌は皆無で、現在も見あたらない。
レイアウトの秘訣などをある種の精神論で語るより、
そのへんの「すごさ」を書いてほしかった。

あとはノスタルジーがちょっと強すぎるところが、
しんどいかなぁ。

いずれにせよ、ファミ通のクロスレビューに疑問がある方。
雑誌でほんとにお勧めのゲームを発見するノウハウを知りたい方。
アスキー、アクセラ分裂騒ぎ当時の「雰囲気」を知りたい方。
そして、なによりゲームライターという仕事を知りたい方ならば、
買って損はしない、まっとうな本だ。

それにしても……。
「ファミ通」のクロスレビューって、
評論とか批評とまったく別物と考えるべきものです。」とは、
アスキーの編集部と、いっさい関係を持たず、
外部からあれを見てきたぼくにしてみれば、
やっぱり、いかがなものかと、思うんだけど……。


2000年5月18日(木)

紙の束
いま愛用のカバンの中に入っているA4用紙は、
すでに数百枚であろう。

いろいろなプロジェクトがたてこんでいる現状、
打ち合わせをするたびに、紙の束をもらう。
資料とか、仕様書とか……。

とりあえず、その紙の束を
VAIOノートとACアダプター、CD-ROMドライブ、
文庫2冊くらいと、新書1冊、筆記用具、携帯電話入りの
カバンに、突っこむ。

約束ぎりぎりの時間で目を覚ますと、
カバンの中を整理するひまがない。
めんどうだから、そのまま出かける。

出かけるときは、雑誌を買う癖がある。
おお今日は「月刊ASCII」の発売日か……。
丸の内線で読んで、カバンにしまいこむ。

打ち合わせが終わって、また紙の束をもらう。
おお、今日は2センチくらいの厚さだ。

TUMIのバックパックはパンパンである。

帰ってヘルスメーターで
カバンの重さを量ったら11キロを超えていた。
あほや……。


2000年5月19日(金)

天下堂々蕎麦づくし
寿司を含んで、人生の道を説き、
蕎麦を食せば、宇宙を語り、
傾城の美女よりも、ワインを選ぶ男、成沢大輔から、
一通の招待メールがとどいた。

「長野にそばを食いにいきませんか。
集合は軽井沢駅で、午後六時ね」

おお、信州そばっすか。そら、いいっすねぇ。
うまい店を知ってるなら、案内してくださいよ。
あっはっはぁ……、てなもん「だ」の三度笠。

午後4時に赤坂での打ち合わせを終え、東京駅へ。
修学旅行生でにぎわう新幹線ホーム、
午後4時48分発の「あさま523号」に乗りこむ。

あさまの3号車は、喫煙可の自由席。
成沢大輔がいるなら、おそらくこの車両であろう。
しかし、席を見渡したところ、
グルメ山脈といわれたその巨体は、見あたらない。

ふふふ……。
さすがは成沢大輔、遅刻の帝王!
列車を乗り過ごして、
おれの日記のネタになるつもりか、ただものにあらず……。

午後6時、麦秋の軽井沢駅、改札口。
一足早くやってきている
さくまあきらファミリーが、にこやかに我を待つ。

されど、成沢大輔の姿は見えず!
ますますもって、
「新緑の軽井沢、若社長、遅れてしまって、さぁたいへん」事件を
演出する覚悟とみたが、
しばし待つほどに、群れなす乗客の背後から、
真っ赤なグルメ山脈が、のしのしと登場。

このときニュース速報で、
「軽井沢震度3」を告げる情報が流されたとの風聞だが、
風聞は、風のうわさだから、あてにはならない。

主役は最後に現われるってわけか!?
成沢大輔、やるもんだ!

地上でいちばん「親分」が似合う男、成沢大輔の案内で
駅前の広場へ。
そこには、10人乗りのバンがある。

ハンドルを握るのは、長谷川浩一郎さん。
長野駅前の長谷川書店の社長である。
助手席に座るのは、徳武和芳さん。
中古ハードショップ「HARD OFF」に勤めている。

「じゃあ、大王、いきますか!」
成沢大輔を「大王」と呼ぶ、長谷川さん。

関八州では、もっぱら「親分」の成沢大輔だが、
信州では、「大王」であったか。
なるほど、すべて合点がいった。

日本の秘史にしばしば現われる
「道楽王国ナリサワ」の大王こそ、成沢大輔であり、
地上に王道楽土を実現せんとする重臣が、
長谷川さんと徳武さんなのだな、つまり……。

このあたりのことは、フィクションなので、
本気にしちゃ、だめだよ。

本当のことを知りたければ、
さくまあきらさんの日記を読んでくれたまえ。
えっへん。

いばってどうする、おれ。

ほお、軽井沢にはプリンス通りなんて、あるのか。
プリンスとは、つまりどういう意味だろう?
おれの知ってるプリンスは、
ジョナ・クヒオとチャールズくらいなんだけど……。
なにか関係あるのかな?

ちなみに、プリンス・ジョナ・クヒオとは、日本人の詐欺師だし、
プリンス・チャールズは、男やもめで、うじがわく。

闇の奥に音が沈んでいく……。
すでに東京とはちがう時空である。
別荘地に入ったバンは、予約制蕎麦店「東間」へ。

東間と書いて、「とうま」と読む。
「あずまかん」と読んだら、素人呼ばわりされちまうし、
「きにちもんにち」とか「とおかびとかどび」と読んだら、
変わりものあつかいされることは、必定である。

別荘を改造した店内で……。
ごま豆腐、うまかった!
蕎麦とみそをしゃもじの上であぶり焼いたやつ、うまかった!
卵焼き、うまかった! 鴨ロース、うまかった!
うまかったが、エコーしていく。

そして、蕎麦である。

地上には、「ざるそば」と「もりそば」の違いは
なんでしょうなんて、不毛な議論があることは、
おれも知っている。

しかし、おれはいいたい。
「喧嘩をやめて、お箸をとめて、
お蕎麦のために争わないで、もうこれ以上……」
歌ってもいい。

そんな議論が不毛であることは、
この蕎麦を食えば一目瞭然、風前の灯、闇夜の烏。

いあわせた7人全員が、
ちゅるちゅるのずるずるっのぞぞぞぞぞ……。

おかわりである。もう一枚である。
口の中には、豊かなそばの香りがいっぱいなのである。

とどめのそば湯だ。

けーむらくんという男がいる。
大学の後輩にして、レコード会社勤務の興味深い人間だ。

彼の人となりのすべてを書き留めるには、
中里介山をして
「大菩薩峠」を完成させるほどの労力がいるといっても
過言ではない。

そんな彼の逸話のひとつに、「そば湯愛好神話」がある。
そば屋にいけば、湯桶が空になるまで、そば湯を飲み、
おかわりまで頼みかねない男である。

彼に「東間」のそば湯を飲ませてやるから、
奴隷になれと命じたら、
きっとクンタ・キンテにならないまでも、
チキン・ジョージくらいには、なるだろう。
(参考文献「ルーツ」アレックス・ヘイリー)

このそば湯はそれほど、うまいということだ。

「わたしの血管には、ワインが流れている」
そんな女優の写真集をおれが買ったことは、公然の秘密だが、
篠山紀信撮影のやつも買ってることも
この際、明らかにしておこう。つまり写真集は2冊ある。

この場にいた全員の血管には、そば湯が流れている。
それは確実だ。解剖所見を見るがいい。
その解剖所見を書いた医者は、
ナポレオン8歳の頭蓋骨を鑑定したことでも有名だ。

人間の肉体の9割以上は水分らしい。
すると蕎麦を食い終えた七人が乗りこんだバンに
含有されるそば湯は450キロと推定される。

450キロのそば湯は一路、長野へ。

とりあえず、ホテルメトロポリタンにチェックインして、
午後10時、駅前のイタリアン・レストラン「ボスコ」へ。

店には、すでに「閉店」の札がかかっているのだが、
それでも天下堂々ツアー御一行が入れたのは、
長野の顔役、長谷川さんの人徳であろう。

供し手によって料理の味は変わるという。
その原理を敷衍すれば、同じ小学館の本でも、
長野駅前の長谷川書店で購入したものは、
同業他店に比べて、二割がた、おもしろくなるのは自明なり。

ここで、ハードオフ長野駅前店長の久保明さんが合流。

店内では、大王と臣下がなにやら密談している。
おお、なにかフランス語が書いてあるビンをとりだしたぞ。
そのうち一本は、ビバリーヒルの店で、
運良く見つけたとかなんとか、いってる……。

なんか、「ぶるごーにゅのぐらすがどーたら……」とか、
 いってるなぁ。
わけもわからず飲んでいるが、おいしいなぁ。
くるくる回すと、味が変わる不思議な飲み物だなぁ。

お、そこに、時空を越えて、メッセージが届いたぞ!

「これ以上書いても、私は嘘かギャグになるので、
この辺のことは、 柴尾英令くんのほうの日記で味わってね。」

はっはっは、さくまさん、申し訳ない!
ぼくは大学で
第一外国語がドイツ語で第二外国語が英語だった男です。

あのおいしい飲みものは、
フランス語で書いてあるビンに入っているものですから、
よくわからんですたい。
ちえっ。英語やドイツ語なら、おまかせなのになぁ。

いまや、おれの血管にはそば湯とワインが流れている。
あ、想像しないでほしい。
おれも想像したくない。

つづいて、ホテル国際の最上階にあるラウンジバーへ。
男性デュオが生で歌うサイモンとガーファンクルが聞こえてくる。

メインボーカルの男性って、
「ダビスタ」の制作会社パリティビット須田さんに似てるぞ
……ってことは、ここにも親分大王の手が……。
結局おれたちは成沢大輔という人の掌で
踊らされていただけなのか……。
いや、きっと夢じゃ、すべては幻でござる。

ホテルオリジナルカクテルの「Kokusai21」をカツーンと飲み、
トムコリンズで中和して、
ここでさくまファミリーはホテルへ。

風俗不毛の地と呼ばれた長野。
しかし、大王と諸侯の会話を聞くと、
なにかがあるとしか思えない……。

善光寺は1500年の歴史を有する。
人類の最古の職業といわれたものは、なんだったのか。
歴史の暗渠に潜む壮絶なる技巧の数々が、
おれを待つというのか。

おお! 技巧のその一は、ビールで乾杯ってやつか。
技巧のその二は、水割りを作ってくれるというのか、
技巧のその三は、なんと、煙草に火をつけてくれるぞ。
技巧のその四は、ダジャレと親父ギャグの洗礼か。
技巧のその五で、「Makeup Shadow」を歌うおれ。

うーむ。
歴史の暗渠に潜む壮絶な技巧の数々は、
六本木や区役所通りで味わうそれと変わらなかった。
長野おそるべし、これだけ飲んで、その料金ですか。

午前2時半、ホテルに帰着。
しかし、このとき、東京から来た一介のゲームデザイナーは
翌日のおそるべき展開を知るよしもなかった……。


2000年5月20日(土)

長野→黒姫
朝10時、チェックアウト完了。
さくまファミリー、成沢大輔大王親分とホテルロビーで合流。
初仕事の日から、
確実に約束の時間に遅れつづけてきた
東京の成沢大輔大王親分だが、
長野の成沢大輔大王親分は一味違う。

「ぱんくちゅある」である!

パンクチュアルとは、なにか。
それを知りたければ、辞書を使いたまえ。
おれをなめるな。いつも親切なわけじゃないぞ。

ちなみに、スペルはpunctualだ。
(非情になりきれない、おれ)

やはり、長野の空気と長野の蕎麦、おフランスのワインが
大王親分を変えたのか。

今日も長谷川さんがバンでお迎え。
ああ、長谷川さん、なんてあなたはいい人なのだ。

これからは、新聞、テレビ、ネットで
長野市と目にし、耳にするたびに、
あなたの優しさを思い出します。

深夜12時を過ぎると、人格一変、ダジャレが増えることは、
ぼくの心の中だけにしまっておきます。

「今日の蕎麦は別格ですよ」
別格はいいけれど、
いったい、このクルマはどこへむかうのか。

「黒姫です!」
え、くろひめですか。
くろひめというのは、にいがたにちかくて、
スキーをするところではないのですか……。

ほらやっぱり、ペンションがいっぱいです。
貸しスキーに貸しスノーボードの看板が並んでいます。

長野県の特産品は時計とプリンターとスキーです。
ああ、蕎麦もあるんですか。
なんですか、ここは山の間の水田の中、
ぽつんと立った別荘のようなお店。

「蕎麦ふじおか」です。

11時半開店だというのに、
すでにぼくらが到着した10時50分には、
先客のクルマが止まっています。

山のきれいな空気はなによりの前菜です。
あっという間に11時半になりました。
お店の中はテーブルが4つあるだけです。

このお店のオーナーは、
蕎麦打ちから配膳まで、たったひとりでこなされているのです。
まず、山菜がならびます。

柴尾は山菜を好んで食べる人ではありません。
あくとか、えぐみがある山菜を、あまりおいしいとは感じないのです。
しかし、この店の山菜ならば、好んで食べます。
とても贅沢な味のするサラダです。
お酒と一緒にお口に含むと、味がふわりと広がります。

そばがきがでました。
そばがきを食べたことありますか。
漢字で書けば、蕎麦掻です。
むかし食べたことのある蕎麦掻は、
もっさりぼさぼさした蕎麦団子でした。

これはなにかちがう料理です。
舌に天使が着地して、ふっくらした香りと甘味を残して
のどの奥へと消えていきます。

つづいてお漬物が出ます。
柴尾はお漬物が苦手です。
二切れほどつまんで口にしました。
なるほど、おいしいです。
しかし、生き方を変えるのに、まだまだ臆病な柴尾です。
箸を止めてしまいました。

大量のお漬物は、みなさまの口の中に
あっという間になくなってしまいました。

そして、蕎麦です。蕎麦切りが出てきました。
ずずずと食べると、のどの奥に消えたあとで、
口の中につばがたくさん出てきます。

まだまだ食え、食いたりないぞ、手を休めるな、
食え、食え、食えって感じです。

もう一枚、おかわりです。
蕎麦って、おかわりした二枚目から、
えぐい味になったり、
水っぽい味が口の中に広がるものだと思ってました。

ここのは、ちがいます。
味が変わらないんです。
おいしさが足し算になっていきます。

「わさびをそばに軽く載せるだけでも、うまいんですよ」
いろいろと親切にしていただいて、ありがたいんですけど、
そういうことはもっと早くいってください、長谷川さん。

その技を確かめてみようにも、
ザルの上には蕎麦が「半すくい」くらいしかありません。

不器用にわさびをつけていると、さくまファミリーが、
こっちので試してみてと、
ザルを渡してくれるではありませんか。

いいんですか。
こんなにおいしい蕎麦をわけてもらって、いいんですか。
おれにはそんなこと、できません。

人のために自分の命を犠牲にすること。
多くの宗教が美徳とすることですが、
人に自分のうまいものを譲ること。
これもたいへんな美徳です。

柴尾はいまこの瞬間、
さくまファミリーに餌付けされたようなものです。

んまい………。餌付け確定です。

そば湯です。
けーむらくんにこのそば湯を飲ませたら、
ガレー船の船底で一生、櫂をこいでもいいと
いうかもしれません。

器の底に残ったつけ汁のおかげで、
そば湯の味がグラデーションのように変わっていきます。

満ちる。満ちる。潮が満ちていきます。

え? 蕎麦ぜんざいってものがあるんですか。
それは食べなければ……。

甘いんだけど、甘くないんです。
口の中で甘さが昇華していきます。

濃いんだけど、淡いんです。
いくつもの小豆の粒、ひとつひとつがはじけていきます。

そしてそばがき状の蕎麦の香りまで、
口の中に広がります。

今日の日記はこれでおしまいです。
これ以上、なにを書けというんですか。

しかし……。
これで終わりというわけではなかったのです。


2000年5月20日(日)PART2

黒姫→善光寺→!!!!!
しかし……。
これで終わりというわけではなかったのです。
まずは、野尻湖へ。

おや。湖面を見つめるさくまあきらさんが、
ふつふつと燃えています。

幼いころ、家族旅行をしたことがなかった
さくまさんにとって、野尻湖は
クラスメートが夏休み日記で自慢げに書き記す
伝説の湖だったのです。

こんなところで、ぼくは……
「休みのたびに家族旅行に連れていってもらってたぜぇ。
大阪万博、鹿児島、宮崎、天草五橋、別府、紀伊半島……。
いっぱい、いっぱい、いきましたよーーーーだ」なんてことは、
口が裂けてもいえません。

蕎麦で餌付けされてますから……。

バンの中では、うとうとしてしまいました。
五臓六腑が蕎麦と同化していきます。

目を覚ますと長野市内。
長野県信濃美術館の東山魁夷館です。

ちょうど東山魁夷館開館10周年記念展
「東山魁夷の世界」をやっています。

なにより、さくまさんお勧めのスポットだけあって、
ここは、とてもいい空間です。
採光と空間の調和が最高です。
ダジャレだと思っていただいてもかまいません。
ダジャレは苦手ですが、餌付けされてます。

いままでの生涯でみた東山魁夷を10とすれば、
485くらいの東山魁夷をまとめて見ました。

全部見終わったところで、
見る順番を変えて見たかったなとも思いました。
これだけの点数があるわけですから、
作画順に見ると、もっといいのかなと思いました。

居心地のよい館内のティールームでくつろいでいると、
成沢大輔大王親分が、
さりげなく、とんでもない提案をします。
「東京に帰ったら、寿司、食いません?」

あ、あ、あんた、そら、強欲ってもんだぞ。
あれだけうまかった蕎麦がまだ胃袋にあるのに、
まだまだ、寿司を食いたいとぬかすか。

成沢大輔はすでにダイオウイカ親分なり。
ダイオウイカはマッコウクジラと戦うことでも有名なり。
格闘したマッコウクジラを食すとは、
まっこと、真のエピキュリアン。

固唾を飲むひまもなく、ダイオウイカの希望どおり、
あっという間に寿司決定とは、これイカに……(←餌付け)。

つづいて、善光寺へ。
なんと、善光寺、うわさには聞いていたが、
これほどでかかったか。

ポケットの中の小銭から、五百円玉だけ抜きとり、
賽銭して満足満足。
参道の仲見世を歩いていくと、
「みそソフトクリーム」の文字がある。

けーむらくんなら、絶対これを食うだろう。
けーむらくんは、ご当地アイテムマニアである。
あれだけうまいそば湯を飲んだせいか、
けーむらくんの生霊がおれに憑依したとしか思えない。

ついつい、「みそソフト」を買ってしまう。

横から、一口なめた成沢ダイオウイカ親分が、
顔をしかめる。

あんたは一口だからいいけど、
おれはこれからぜんぶ食うんだぞ。
軽井沢と黒姫で、うまい蕎麦を食った原罪を贖うために、
ええ、残さず、コーンまで食べましたとも……。

長野駅で長谷川さんとお別れ。
長谷川さん、ほんとうにありがとうございました。
ぼくはあなたの大きな好意に、餌付けされました。

新幹線で長野→上野……。
途中、軽井沢付近は霧、霧、霧のレガイア伝説。

上野駅の喫茶店で、
さくまさんのVAIO設定をすこしいじったあと、
タクシーで人形町へ。

「ふふふ……。ここは
すぎやまこういち先生の寿司ランキング第一位だよ」と、
さくまさんに連れてきてもらったのは、人形町「喜寿司」。

この店の「喜(き)」は、

七七
と、書くのだが、あいにくフォントがない。

「うまい寿司って、食べれば食べるほど、
お腹がすくんですよね」とは、成沢大輔。
さすがは成沢、だてにダイオウイカ親分ではない!

その言のとおり、いくつでも食べられそうだ。
うまいを通りこして、豊かな気分になる。

きりっとした塩で食べた穴子、うまかったなぁ。
帰ったあとで、また、注文するんだったと、後悔したくらい。

イカや貝もうまかったなぁ。
一晩明けて日記を書いていても、
その味を思いだせちゃう。

めくるめく、めくるめく……。一泊二日であった。

製作総指揮
成沢大輔さん@ダイオウイカ親分

監督・脚本
長谷川浩一郎さん@長野のタニマチ

出演
さくまあきらさん@野尻湖は鬼門
佐久間真理子さん@じつは、のんべ
佐久間ゆりさん@グルメバカ娘
徳武和芳さん@麺食いナンバーワン
久保明さん@ダジャレ界の藤村
柴尾英令@餌付けされまくり

特別出演
東山魁夷@東山魁夷館

この日記はすべてノンフィクションです。
一部表現に過剰な点もありますが、
作者が軽薄であることや、
時代背景を考慮する上で、
必要な表現と解釈して、
ご笑覧いただくことを期待しております。


2000年5月20日(土)PART3

銃夢問題終結
このサイトでも、ちらりと触れた「銃夢HN」騒動が
きっちり終結したようだ。


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