史上最悪のドコモショップ(当時者比)
-前日までのあらすじ-
初期不良報道の対象となったドッチーモSH821iユーザーであるゲームデザイナー。それが柴尾英令である。6月に問題の機種を購入したドコモショップを再訪。所持するドッチーモが該当のロットであるかどうかを聞いてみた。該当ロットであれば、無償で交換の対象となるのだ。窓口担当の女性から、不可解な説明を受け、交換はならず。とりあえず、その場は退散した柴尾英令だが、その後、さらに不可解かつ理不尽かつ人外魔境なあつかいを受ける羽目に陥るとは、思ってもいなかった……。
午後2時、前日のドコモショップで起こった事件を
日記にまとめているうちに、
「これはどう考えてもおかしいのではないか……」と、思い、
インターネットであれこれと調べてみる。
おれの調べ方がまずかったのかもしれないが、
ドコモのサイトには、SH821i初期不良関連の発表はない。
結局、発見したのは、この記事とこの記事である。
記事を読むかぎり、
おれのドッチーモは初期不良の対象商品としか思えない。
とはいえ、昨日のドコモショップの木で鼻をくくったような対応では、
こちらの疑問も解決しない。
そこで、ドコモに直接電話をかけることにした。
ただ、請求書やパンフレットを見ても、
この種の「相談」をどこに連絡すればいいのか、わからない。
よくわからないので、
請求書に「営業お問い合わせ先」と書いてあった
「151」に連絡することにした。
「NTTドコモ東京電話受付センターです。
自動音声での受付は<1>をファックスでの受付は……」
自動応答音声が流れる。
マンツーマンでなければ、解決しない問題なので、ちと困る。
しかし、しばらくボタンを操作しているうちに、
オペレータと直接肉声で話せることが判明する。
電話に出たオペレータのK山さんに、
ドコモショップの経緯を説明した上で、
自分のドッチーモが該当するロットなのかどうかを調べてもらう。
1〜2分で回答。やはり該当ロットだったようだ。
昨日のドコモショップの対応は、なんだったのだろう?
さらに機種交換の手順を指示してほしいと聞いたところ、
とりあえず、K山さんのほうから、件のドコモショップに連絡。
その後、折り返し電話をかけてくれるとのこと……。
いったん電話をきり、昨日の日記をまとめながら、
K山さんからの電話を待つ。
ほぼ10分ほど経って、K山さんから着信。
ナンバーディスプレイに「0120……」と
表示されるのが興味深い。
なんでもK山さんは、ドコモショップに電話をかけたのだが、
当時の窓口担当者が、だれであるかがわからず、
状況がよくわからない。しかし、
おれの持っている機種が交換の対象ロットであることは
たしかなので、直接ドコモショップに申し入れてほしいとのこと……。
おかしな話である。
本来の筋なら、このドッチーモを販売し、
まちがった説明をしたドコモショップが、
おれに直接電話をするべきであろう。
あるいは、ドコモ本体がなんらかの対応をするべき問題。
いい方はきついが、不良品を売った上に、
それを当事者に告知せず、問い合わせをした当事者に対して
意味不明な返答で、いいくるめたあげくに、
そっちから、でむいてこいというわけだ。
しかし、その一方でドコモショップがNTTドコモ直営ではなく、
フランチャイズのごとき、ライセンス制で
営まれていることも知っている。
フランチャイズではないサンシャイン横の池袋支店などにしても、
窓口は派遣社員ばかりで構成されているほどだ。
見た目はおなじだが、内実はばらばらというわけで、
K山さんに文句をいっても、
最終的な問題解決(迅速な機種交換)には、つながらない。
さらに、おれには人間観察の趣味がある。
腐っていそうな人や団体が自分に関わってくると、
どの程度、腐っているのか、じっくり観察したくなるのだ。
その期待は予想以上の現実によって、
かなえられることになる。
「デンウケからも、交換の対象といわれたと、
いってもらってもかまいませんから」
「デンウケ……?」
「あ、電話受付センターです」
そういったK山さんのことばに、
問題のドコモショップから漂う腐臭を感じとり、でむくことにした。
予想をしのぐ恐怖の対応
我が家からドコモショップまで、徒歩で20分ほどである。
昨日に続いて、往復で40分も歩くのは、まさに二度手間。
人間観察が趣味とはいえ、うざったいことなり。
昨年、経営不振で外国人が社長となった自動車会社。
そのディーラーのショールームの軒先の半分を借りる形で、
問題のドコモショップはある。
店内に入ると、奥の事務所から女性店員がやってくる。
「どういったご用件でしょうか」
説明するのがややこしい。
「持っているドッチーモが初期不良品なんだけど、昨日、そうじゃないと、この店で否定されて、でも、やっぱりおかしいとおもったので、あらためて、ドコモ電話受付センターに電話をかけたら、やっぱり初期不良品に相違ないそうだから、わざわざ、遠路はるばる二日連続でこの店に交換に来たんですよ」
……みたいなことを四苦八苦しながら説明。
「そういうことでしたら、
あちらで番号札を受けとってお待ちください」
ほへ?
デンウケから連絡が入っているはずだから、
すぐ対応してくれるんじゃないかというのは、
甘い見積もりであった。
通常の窓口は、三組の席があり、埋まっているのはひとつだけ。
すぐにでも話ができそうだ。
しかし、指差された「あちら」は「ドコモテクノ」という別区画。
椅子のないカウンターに、先客が、ひとりついている。
10分ほど待つ。先客が帰る。
眼鏡をかけ、青いシャツを着た店員が、銀行窓口のような
番号表示板を操作する。
目の前にはおれひとりしかいないんだから、
直接、声をかければいいのに……。
カウンターに歩いていくと、「どういったご用件ですか」
説明するのがややこしい。
「持っているドッチーモが初期不良品なんだけど、昨日、そうじゃないと、この店で否定されて、でも、やっぱりおかしいとおもったので、あらためて、ドコモ電話受付センターに電話をかけたら、やっぱり初期不良品に相違ないそうだから、わざわざ、遠路はるばる二日連続でこの店に交換できるかどうか、確かめに来たんですよ」
……みたいなことを四苦八苦しながら、もう一度説明。
店員、めんどうそうな顔をする。
「じゃ、携帯の電話番号と名前を……」
「090-8***-****です」
あれ……? なんか、いやそうな雰囲気……。
へたくそな字で用紙に電話番号を書きつけているぞ。
そうか、おれに書いてくれと、いいたかったんだな。
でも、おれが、そそくさと電話番号を口にしたから、
しかたなく、書いてるんだろうな。
そういう雰囲気で
ぞんざいに書きつけられる自分の名前というのは、
見ていて、いやーーな気分になるものなり。
「ちょっと待ってください」と、いうなり、
おれのドッチーモを持って、
奥にあるカーテンで囲まれた部屋に入る店員。
5分待つ。10分待つ。20分待つ。30分待つ。
おかしいなぁ?
交換できるかどうか、確認するにしては、
ずいぶん時間がかかるなぁ。いらいらする。
店内をぼーーっと見ていると、
最初におれを案内した女性店員が露骨に目をそらし、
おれの死角に身を隠す。
あーあ、あほか……。
とほほな気分になる。
40分待ってカーテンから店員が顔を出す。
「暗証番号は何番ですか」
え? どういうこと……?
大学の先輩、黒沢哲哉さんが、
8月19日にドコモの代理店で遭遇した
暗証番号漏洩事件が脳裏をよぎる。
ほかに何人も客もいるし、店員もいるってのに、
ここで暗証番号を口にしろっていうわけ……?
まぁ、教えたけど……。それにしても……。
あれ……? あれれれれ……?
暗証番号を教えろってことは、
つまり本体の操作をしてるってこと?
本体の操作をしてるってことは、
つまり、メモリーの乗せかえをしてるってこと……?
ええええええっ?
「交換は可能です」とも
「新しい携帯にメモリーを移しますか」とも
なにもいわないまま、
プライバシーや個人情報が満載のメモリーを
勝手に移してるの?
唖然とする。
唖然としてると時間が経つのが早い。
それから10分ほど経ち、
「お待たせしました」と、気の乗らない声とともに、店員登場。
バッテリーつきでストラップなし。
バッテリーなしでストラップつき。
持っている2台の携帯電話を投げるようにカウンターに置く。
そこから、なにもいわない。
交換が成立して、メモリーまで勝手に移してくれたことは
明々白々。
いやもちろん、交換ができれば、
メモリーを移してもらおうとは思っていたけどさ……。
相手がなにもいわないので、こちらから言うしかない。
「ちょっと確認しますね」
市販の携帯メモリーソフトで、SH821iを操作する場合、
メモリーの電話帳はバックアップできても、
メールや壁紙、着信音などを読むことはできない。
勝手に移し変えられた結果、そっちが消えてしまったら、
しゃれにならない。
バッテリーのついているほうの携帯からバッテリーをとり、
ストラップのついているほうに移しかえる。
そっちが新しいほうだと思ったのだ。
おお! メールの本文まで
しっかりバックアップできてるじゃないか。
ちょっと感動して、「メールもバックアップできるんですね」と、
いったおれ。
「うん。そうだね」
!
おれの耳が悪くなったのか……。
客に対して、「うん。そうだね」だって……。
あれ? よく見ると……、画面に少し傷がついている。
ということは……。
こっちが古いほうじゃないかァァァァァァァァァァァ!!
じゃあ、きさまの「うん、そうだね」は、なんだァァァァァァァァァァ!!!
ここまできたら、口に出して怒りを表明できないほど、
呆然としてしまう。
あせって新しいほうに、バッテリーをはめなおす。
よかった。
こっちのほうにメールも壁紙もしっかりコピーできている。
とりあえず、それだけは、たしかな事実である。。
「なにか受取証みたいなのは書かなくていいんですか」
そう聞いたおれに対する店員の答えは……。
「べつに、いいよ……」であった。
メモリーを確認していると、係員が声をかけてくる。
「あと、ストラップはそっちで外して」
まぁ、そうだね。ストラップは私財だし……。
て、ドッチーモ本体も私財なんだけど……。
おれが大声をあげて、怒鳴りつけないのは、
公共の場で声をあげない、自分の美学があるから……。
それだけである。
マゾかもしれない。
いや、きっとマゾなのだろう。
そうだ。美学じゃない、ただのマゾなんだ、
人生37年目にして、自分の性的志向を発見する。
ストラップには、サウスパークのキャラふたつがついている。
ストラップを外すのにてまどるおれ……。
そこに店員の非常識行動のとどめが、あったとは……。
おれが古いドッチーモから、ストラップを外し、
新しいドッチーモにそれをつけている最中、
店員は古いドッチーモを手にとり、くるりと背を向けると、
ただ一言も口にしないまま、カーテンの中に消えていったのだ。
ほんとうに一言もいわないんだよ。
不良品を売りつけて、いんちきな説明をして、
二度もここに来させて、勝手にメモリーをのせかえて、
無礼なことばを吐き、一言もいわずに、
おれを置き去りにしたんだよ。
世の中に人外魔境は存在する。
ただ、だれもが知らないのは、歩いて20分という近距離に
それが存在しているということだけだ。
そんな人外魔境において、
人間は怒りの感情を発露することさえ、
無益であることを思い知る。
6月5日、この店で起こった事件に関する日記の感想は、
全面的に撤回する。
この店が悪い。この店は腐っている。
帰り道も20分
旧川越街道を歩きつつ、
新品になったドッチーモから、151に電話をかける。
K山さんを呼び出してもらい、心よりのお礼。
なによりK山さん自身が、ドコモショップの対応には
戸惑っていた様子だったから……。
あらためて、ドコモショップで、
自分がどういうひどい目にあったかを簡単に説明する。
それから……。
「こういったことを改善していただくお願いは、
どちらにしたらいいんですかね?
メールとか手紙でもかまわないんですけど……」
そんなことを聞くなんて、気弱になっているのだろう。
「苦情の受付もこちらになっているんですが……。
窓口の係員の名前とか、おわかりでしょうか」
「それがわからないんですよ」
きっとおれは自分をひき逃げしたクルマのナンバーを
確認できないタイプなのだろう。
「いずれにせよ」おれは、とりあえず口にする。
「おかげさまでドッチーモの交換はできました。
ありがとうございます」
少なくとも、人外魔境を経験したあとは、
人間に話ができることだけで、
感謝の気持ちも生まれるというものだ。
「では、失礼します」
「失礼します」
初期不良の情報を耳にしながら、
早めに問い合わせなかったこちらにも
非があるのかもしれない。
機種交換を知らせるドコモからの通知は、
送られたあとに、郵便事故に遭ったのかもしれない。
昨日、店頭で説明した女性店員は、
純粋に勘違いしただけかもしれない。
でもね。おれは顧客なんだよ。
いいたかないけど、年間でドコモに、ン十万円、
通話料とデジタル通信料を払ってるんだよ。
まさか、その料金のマージンが一円でも、
あのドコモショップに流れるようであれば、
せっかく交換したドッチーモだけど、
水没させて、データを全部吹っ飛ばしてでも、
ほかの店で本体を買いかえるね。