なんだか、インド系っぽい女性がひとり、
飛び降りるのを断念していたけれど、
ほかはおおむね、飛び降りていた模様。
ゴンドラで断崖にあるロッジに戻ってみると、名前を呼ばれる。
おれのジャンプを撮影したビデオがロッジ内のモニターに流れる。
すごいなぁ。まるで、なにかの物体のようだ。
物理法則に従い、ぶんと落ち、ぶらぶら揺れ、巻き上げられている。
クイーンズタウンでチェックインした際、
写真は注文していたのだが、ビデオは注文していなかった。
しかし、これを見せられたら、買うしかない。
買っちゃいました。帰路、ビデオ方式が気になるが、
ニュージーランドのPAL方式ではなく、
きちんと母国、日本に合わせたNTSC方式で記録されていた。
たいしたものである。
ほかにバンジーを飛んだという認定証もいただく。
振りかえって、あれこれ考えてみれば、おれにとって、
バンジーのいちばんの醍醐味は、落ちている最中ではなく、
そこにいたるまで、想像力、恐怖心などから生まれる
内心の葛藤そのものであったのだなぁ。
ジャンプそのものから、ことばになる表現の源となるものは
なーーんにもない。ほんとうに「アイ アム エンプティ」なのだ。
それもすごい話なんだけどね。
空前の体験を終えた一行を乗せたバスの中は
ある種の躁状態。ひたすらににぎやかである。
一生の語り草になる体験をしたのだから、無理もない。
クイーンズタウンに帰着後、
肉料理に辟易していた石川さんが和食を食べたいというので、
日本料理店「南十字星」にいく。
石川さんは、天ぷらうどんを食べ、ぼくはランチコンボ。
なにげなくオーダーしたランチコンボだが、
前菜がニュージーランドロール、
メインが素うどんと天丼という、炭水化物三点セット。
完食いたしましたが、なにか……。
その後、石川さんは、持ってくるのを忘れた靴下と
ナイトキャップがわりのウイスキーを買い、
ふたたび、観光案内所「the STATION」へ。
ショットオーバージェット
午後3時30分、「the STATION」で、
「ショットオーバージェット」のチェックイン。
ショットオーバージェットは、かつてゴールドラッシュで
栄えたショットオーバー川を
高速のジェットボートでかけぬけるアクティビティだ。
せまりくる断崖絶壁ぎりぎりに、進む爽快感で、
クイーンズタウン名物となっている。
大型バスに20分ほど乗り、ショットオーバー川へ。
水に濡れるために使えないカメラや手荷物を
トレーラーに預け、ライフジャケットを身につける。
ドライバーのほか、乗員は10名。
老人を含んだ家族連れと同乗。
ほぼ6キロにわたるコースを、すごいスピードでかけぬける。
ドライバーが指をくるくると回すと360度ターンのサイン。
ボートが高速回転し、激しく水を浴びる。
ふたたび、スピードアップをすると、風速で水が乾いていく。
たしかにエキサイティングで、楽しいアクティビティだが、
あのしびれるようなバンジーを体験したあとでは、
刺激が足りない感じでもある。
順番が違ったのはちと残念だったね。
午後5時30分ごろ、クイーンズタウンにもどる。
そのまま20分ほど歩いて、「ROX」へ。
ゲストラウンジで、昨夜の札幌からの親子連れと
おたがいのバンジービデオを見せ合う。
親子はカワラウブリッジで43メートルバンジーを体験していた。
石川さんもゲストラウンジに合流したのだが、
どうにも眠たい模様。客室にもどる。
ぼくはスタッフのかなこさんといろいろ話す。
そのうち、かなこさんがノートパソコンを持ってきて、
いろいろと質問。
彼女がいま作っている
ウェブページのデザイン方法などをあれこれ伝授。
こちらも昼過ぎに食事を食べすぎたし、
石川さんはしっかり眠っているようだし……で、
ほかにやることがない。
午後9時くらいまで、そんな感じ。
凶悪なる寝起きパワー
客室にもどり、石川さんに声をかけるが、返事がない。
まるで、しかばねのようだ。
しょうがないので、風呂に入る。
客室のドアがノックされるが、
バスタブの中では動きがとれない。
……と、ものすごい怨嗟の声が上がる。石川さんだ。
石川さんは、けたたましい足音を立てて、ドアに行く。
明日の朝食の時間を聞きにきた女性の声に、
「7時45分!」と、壮絶に不機嫌な声で答えると、
ものすごい音で、ドアを閉める。
「なんか、すげぇなぁ」と
風呂の中で感じてしまった。
風呂から上がり、本を読んでいると、
石川さんが起きだしてきた。
「なんか、だれかが朝食の時間を
聞いてきたみたいなんですけど……」
どうやら、はっきり覚えていないらしい。
「オーナー夫人と、女の子(かなこさん)、どっちでした?」
「子供を連れてきた女性だったのは
覚えているんですけど……」
朝が来るたびに思っていたのだが、
午前中の石川さんは壮絶に不機嫌である。
あとでそのことをネチネチいっていると、
その不機嫌さは、社内でも有名で、
編集会議の朝、寝坊した際、家に電話をかけてきた
編集長を怒鳴りつけたという前歴があるらしい。
もちろん、途中でそれと気づき、
思いっきり謝ったらしいが……。
石川亨、午後から深夜にかけては、
最高にチャーミングな男なのだが……。
夜のレストランめぐり
さて、午後10時30分である。
さすがになにも食べていないければ、
夜も寝られないということで、
町の中心地に歩いていく。
しかし、午後11時のクイーンズタウンでは、
開いているレストランはほとんどない。
営業時間に「until late」と書かれていても
10時ごろには閉店している模様。
そんな中、なんとか見つけたのが、
インド料理店「Freiya Indian Restaurant」。
「やっぱりこのインディカ米がたまりませんなぁ」
どうやら石川さんは今回のニュージーランド旅行で、
この店のカレーがいちばん気に入った模様。
数時間前の不機嫌さはどこへやら、
ひたすらご機嫌な石川さんであった。
ROXへの帰途。昨夜ほどではないが、
空には美しい星が瞬く。
見上げた北の空、オリオン座の方向には流れ星。
中天で砕け散り、
割れた破片が箒のように軌跡を残していった。