【読書】国際テロ
「国際テロ」は、「レッド・オクトーバーを追え」、「いま、そこにある危機」など、かつてハイテク・スリラーの旗手といわれたトム・クランシーの最新作だ。
CIAの分析官から大統領にまで昇りつめたジャック・ライアンは、まったくといっていいほど、登場しないのに、本書の主要登場人物一覧では、最上位に紹介されている。
新潮社が本書をジャック・ライアンシリーズとして売りたいのはわかるけれど、端的にあざとい。
ジャック・ライアンが大統領になる歴史の中ではデンバーで核爆発が起こったり、日本と戦争した結果、日航機がワシントンに自爆テロをしたり、中国が資源を求めてシベリアに侵攻したりと、刺激に満ちている。
そんな歴史の中でも911の同時多発テロは発生したようで、ジャック・ライアンが大統領としてその災禍に立ち会わないために、ちょっと苦しい言い訳が作中にあったりする。大統領職にうんざりして辞任しようとしたところ、黒人の副大統領が人種差別主義者の暗殺に遭うとか、なんとかで、かなり強引なのだ。
さて、激化するテロを阻止するための解決策として、秘密組織を作り、必殺仕事人のようにテロの首謀者を暗殺するというのが、本書の骨子である……というか、ほんとにそれだけの話となっている。
国際救助隊「サンダーバード」は災害から人命を守るための秘密組織だが、こちらの諜報機関「ザ・キャンパス」はテロリストの人名を奪う秘密組織。CIAの調査結果を盗聴の形で取得。それを分析し、独自に暗殺者をさしむけるのだ。その存在は現職大統領さえ知らない。
もともと、ジャック・ライアンの出世物語には「島耕作」を髣髴とさせるご都合主義の感が漂っていたのだが、本書ではそれが一気に加速。いくらなんでもそれはやりすぎだろうと、失笑せざるをえないところも多々あった。
主人公のひとりはジャック・ライアン・ジュニア。前大統領、ジャック・ライアンの息子である。そして特命を追った暗殺者にジュニアのいとこである双子兄弟があたる。暗殺の段階で、二卵性とはいえとてもよく似た双子が標的のそばをうろちょろすれば、それだけで目立つだろうが、そういうことはお構いなし。
多発するテロに対抗するためには、こういった組織が必要であり、それができる可能性はあるのだというクランシーの主張を語るために、小説の肉付けをしたようなもの。プロットを練りこむより、一刻も早く上梓したかったというあせりさえ垣間見える。クランシーの話としては地味すぎるのだ。各所にある伏線さえ(続編を意識しているのか)、消化しきれていない。
「いま、そこにある危機」ではコロンビアの麻薬王を殺害するために、軍事衛星を使った攻撃が描かれていたが、本書にはそういったけれん味あるクライマックスさえない。
じつはクランシー世界では「レインボー」という対テロ組織があり、本書でもその存在には言及しているのだが、クランシーはいったいいくつの対テロ組織を作ればいいのだろうと、思ってしまう。その「レインボー」の活躍を描く「レインボー・シックス」も凡作だったが、「国際テロ」ともなればもう……。
テロリストとの陰湿な戦いは、クランシーの作品世界にも暗い影響をあたえてしまったのか。じりじりと考えつめた挙句に「超法規的手段で殺しちまえ」という単純な結論に至ったのが、せつない。
トム・クランシーの弱いところがまとめて出て、美点がほとんどなくなってしまったのは、残念。
| 国際テロ〈上〉 | |
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コメント
はじめまして。
なんとなく、うちの近所の前田有楽をググってみたらひっかかってこんにちわです。
んで、レガイアのデザイナーさんとは思わずまたしても腰を抜かしました。生れ落ちて29年八幡に住んでおりますが面白いことが起きるもんですね。
コネリーもハリソン・フォードも思い出さずに何故かスティーブン・セガールが頭の中で大暴れしていたのは秘密です。
投稿者: 偽善者 | 2005年09月07日 14:43
はじめまして! レスが遅れてすみません。ほんとにご近所さんですね。生まれて29年ということは、ぼくが中学に通っていたころ、八幡にいらしたわけですから、どこかですれ違っているかもしれません。
投稿者: 柴尾英令 | 2005年09月18日 09:01