【グルメ(酒)】OK牧場
One for all.All for one.
ひとりはみんなのために、みんなひとりのために。
興味はあるけれど、一人ではいけないところってあるのですよ。そんないけないところのひとつが、コスプレ焼肉「OK牧場」なのだ。
1週間前にこの日記で勇者を募った。おれを含めて5人の勇者が集まった。
約束の時間は午後7時。最寄り駅の神田に20分ほど前に到着したおれは神田駅北口交差点前のスターバックスで、クライトンの新作を読んでいた。グアテマラブレンドの「本日のコーヒー」がうまい。
午後6時50分。携帯に着信。まほさんだ。すでに神田に到着しているという。スターバックスにやってきた、まほさんがいう。
「さっき、場所を確認するためにお店の前にいってみたんですけど、すごいことになってますよ」
ふたりで店の近くまで、いってみた。すごいことになっていた。
一杯飲み屋とか、サラリーマンに格安の酒を提供する居酒屋がならぶ神田駅前のわかりにくい路地に、メイドさんだのチャイナドレスだのシンデレラだのバドガールだの、10人近いコスプレのお嬢さんたちと、ピカチューの着ぐるみを装備した男が立っている。
クローゼットの中にナルニア国を見つけるより、インパクトがある光景だろう。
路地をのぞきこんだ男に対して、メイドさんだのチャイナドレスだのシンデレラだのバドガールだのが、女声ユニゾンで声をかける。
「いらっしゃいませー! 焼肉はいかがですか!」
ひいいいいいい! あの中に入っていくのか。歌舞伎町のソープ街前を歩く単位を1勇気としたら、185勇気くらい必要である。
入った。
「すみません。予約してますから……」
あらかじめ予約していることは、まったく言い訳にならない。
案内されるテーブルを見てみると、すでに放送業界の大巨人、ふくぽんさんが到着していた。アルプス山脈のような巨体が、心なしか、箱根山のように小さく見える。
店内の壁一面には、コスプレの衣装がいろいろ。女性客がたのめば、着せてくれるという。店内にあるのは、10くらいの焼肉テーブルだろうか。一応、無煙ロースターになっている。
勇者はあとふたりだ。ぴろりさんからは、10分ほど遅れるとメールが入っていた。予約のおかげで、二卓になっている。時間制の食べ放題となっているので、すでに3人が集まっているテーブルから別会計で始めることにする。
そのとき、これが大きく運命を変える分水嶺となっていたのに気づくものはいなかった。
最初についてくれた子は、女子高生姿のHちゃんである。Hちゃんは秋田出身のきわめてかわいい女の子だ。あとで、まほさんが「いちばんかわいい子が最初につくとはどうよ!」と、いっていたが、同感である。
「その制服、どうしたの?」
「田舎から持ってきたんです」
「え、私服の制服?」
「そうなんですよ。これで渋谷の町とか、歩いたりするんですよ」
うひょおお。
「エプロンおつけしまーす!」
紙でできたエプロンを客ひとりひとりの首に通してくれる。
トングで肉を鉄板にのせ、焼いたあとに、ひとつずつ、タレの入っている小皿にとりわけてくれる。食べ放題なんだから、もっとがばがばと焼いてほしいとは思うんだけど……。
肉の味は、まぁ、普通だな。ロース、ハラミ、バラ、テッチャンとメニューには書いているが、あまりサシのないハラミが多いように感じた。まずくはないけど、うまくもない。
残った二人の勇者、ぴろりさん、べーぐる犬さんがそろったのは、午後7時15分くらい。店内にはまだ客がほとんどいない。その中に女子高生、メイド、白雪姫、チャイナドレス、バドガール、シンデレラ、巫女、ナースなど、各種コスプレ姿の女の子たちが、うろうろしている。
「なんだか、学祭の模擬店みたいな雰囲気もありますよね」
あらゆるものがミスマッチな空間だ。まだ客が少ないから、われわれのまわりをコスプレ店員が囲んでいる。おれはこれになにを感じればいいのか。わからない。戸惑う。
キャバクラのフリー入店のように、肉焼き担当のコスプレ女は10~15分単位で変わっていく。これまた、キャバクラのようにこの店には指名制度があり、1500円で女の子をつけっぱなしにできるという。女の子によっては、「指名してください」とアピールを忘れない。ていうか、いまどき、都心のキャバクラでは、こんなに露骨な指名ねだりはしないぞ。
指名が「だめ」とわかると、おねだりドリンクだ。なんだか、キャバクラめいてるなぁ。
店内が満席になったのは8時すこし前くらい。ぴろりさんたちのテーブルから女の子がいなくなる。この店は「つけまわし」がうまくない。
ちなみにつけまわしとは、キャバクラ用語で、客に女の子をローテーションよくつける行為、あるいは、それを担当するひとのことをいう。
そこにやってきたのが、男性スタッフだ。
「すみません! ドリンクいただいてよろしいでしょうか」
うひゃあああ。男がドリンクをねだってるよぉ!!
どはああああ。ぴろりさんたちおごってあげてるよぉ!!
さらにぴろりさんと、べーぐる犬さんたち、ふたりとも女の子を指名しているよ。やさしいなぁ。ていうか、お大尽である。
一方、こちらのテーブルでは、キャバクラ遊びの急成長株、まほさんが、番犬のように「指名おねだり」を撃破! その断固たる態度は美しい。
女の子たちのマニア指数は低い。アニメ系のコスプレは存在しない。コスプレも慣れると、当たり前の光景になる。そうなると残るのは、キャバクラ要素である。女の子のクオリティはそこそこ高い。キャバクラ的営業の拙さもあるし、「つけまわし」のまずさも検討課題だろう。
「また、よろしいですか」
さいしょに女子高生姿だったHちゃんである。今度はチャイナドレス姿だ。
「お店が混んできたから、カーデガンに匂いがうつると思って」
とてもかわいいではないか。その一方で、ぴろりさん組はスタッフや女の子にねだられるまま、大盤振る舞いだ。
この店ってば、不思議な楽しさがあるんだよ。
ノリ次第で、お肉を口にあーんしてもらえるし、ゆるい雰囲気の中で、女の子たちとおしゃべりしながら、焼肉を食べるという世界観は、心をかきみだすものがある。
この内容なら、神田ではなく、ほかのロケーションのほうがいいのではないかと思う。もっと盛り場にあれば、客が勢いをつけて、入れるんだけど、神田ではなにか中途半端である。
さて、会計である。
われわれ3人テーブルは割り勘で、ひとり8,300円くらいですんだ。1時間半、キャバクラにいたあとに、肉を食うことを考えると格安といえよう。
その一方で、ぴろりさんたちの2人テーブルはひとり15,000円近い割り勘になったようだ。ぴろりさんはせつない顔をしていた。
この店では、うかつに指名しないこと。うかつにドリンクをおごらないこと。それが攻略法であろう。
One for all.All for one.
ひとりはみんなのために、みんなひとりのために。
そんなことをいってた時代もあった。
その後、中央線で新宿に移動。Pearl Barでしみじみと飲む。環境の落差がすごい。さらにまほさんとは、ハシゴ酒。
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