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【映画2006】ワールド・トレード・センター

 ワーナーマイカルシネマズ板橋10番スクリーンにて4K Pure鑑賞。

 デジタル上映の臨場感は、この手のリアリティ追求型の作品にも有効だった。美術館での名画鑑賞では、ガラス越しとじかに肉眼で見るのとでは饒舌さが大きく変わるように、デジタルの情報量がいまその場にいる感覚をダイレクトに刺激してくれた。

 9月11日、世界貿易センタービルでは2602の人命が失われた。そして、ビルの瓦礫の中から救われた人は12人。この映画はそれだけ大きい分母の中で救出された2人のリアリティあふれるドラマだ。

 さんざん政治色の強い映画を撮ってきたオリバー・ストーンだが、なにもかもがぐずぐずの「アレクサンダー」のあとに、まさか、こういう作品を撮るとは思わなかった。

 考えてみれば、ホラー映画2作を撮った後、アカデミー賞を「プラトーン」で受賞したオリバー・ストーンの持ち味は、痛みを伴う鮮烈な悲劇にあり、政治的主張をクローズアップされ、その手の看板をつけて、映画を撮り続けたことが、作家としての幅を狭めてしまったのかもしれない。

 ワールドトレードセンターの瓦礫の下に押しつぶされて、そこから救出される映画であるから、人間の動線はほとんどない。情報の混乱。なにが起きるのか、なにをすればいいのか、わからないまま、一気に崩落するビルディング。

 その戸惑うことすら許されない時間感覚は、まさにあのとき、同時進行でテレビを見つめていたわれわれの感覚でもあるが、情報が遮断された核の中の当事者にとって、圧倒的で不可解でことばさえもない暴力なのだ。

 同じ事件を扱った「ユナイテッド93」では、ハイジャック犯という敵の顔が見えた。また、戦争映画なら敵軍を敵とし、自国政府を敵とすればよかった。しかし、「ワールド・トレード・センター」は敵がいないことがリアリティである。

 さらに瓦礫に体を押さえつけられ、いっさい動けない主人公たち。敵もない。動きもない。という映画における二重苦の中で、これだけの作品をよくぞ撮れたと思う。

 これに近い感触の映画はなにかと思い返せば、スキューバダイビングをやっている最中、船に置き去りにされ、広い海原で二人孤立してしまった「オープン・ウォーター」だったりもする。「オープン・ウォーター」はサメがいる分、こっちよりアクティブだったかもしれない。

 オリバー・ストーンの演出力で臨場感あふれる作品だったけど、これってどんな顔をして、劇場をあとにすればいいのか、よくわからないのだ。腑に落ちないスリルライドにつきあったようなやるせなさが残る作品だった。
    

※こちらのエントリーもどうぞ。

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2006年アメリカ 今でも印象強い9.11テロでの出来事 星印など付けてはならないのだろうが 作品としての印象で付けさせてもらった。 [詳しくはこちら]

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