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【映画2006】トゥモロー・ワールド

 ワーナーマイカルシネマズ板橋2番スクリーンにてSRD鑑賞。

 P.D,ジェイムズの「人類の子供たち」が映画化されると聞いて、それなりに期待していた作品だ。しかもアメリカに先駆けて日本先行公開。

 ちなみに東宝東和はこの作品にかなり出資しているようだが、そのわりに「トゥモロー・ワールド」なんて、やる気のない邦題はいかがなものかと思うぞ。

 西暦2027年。最後に子供が誕生して以来、18年が経過。地球上から赤ん坊の泣き声も、子供たちの笑う声も絶えてひさしい。希望を失った人間の社会は崩壊。かろうじて英国のみが体制を維持しているに過ぎない。しかし、その強圧的な体制を打破するべく、秘密組織FISHが、破壊活動をくりかえしている。

 究極の少子化社会ドラマである。というか、無子化社会ともいえる。

 もともと破滅ものは好きだし、イギリスが舞台の全体社会テーマの破滅ものときたら、もうみるしかないよね。

 「キング・アーサー」でへたれ中年ローマ士官を演じて、好印象を残していたクライヴ・オーウェンだが、今回もかつての活動家にして、現在はへたれた中年官僚を好演。あいかわらず、イギリス風な役所広司であるけれど、クライヴ・オーウェンファンなら、それだけで必見である。

 マイケル・ケインの存在感もすばらしい。社会から隠遁生活をしている元ジャーナリストの役なのだが、長髪の老人という味わいがなかなかすばらしい。

 さらに手持ちカメラで長回しするドキュメンタリータッチのカメラワークもすばらしい。クライマックスの交戦シーンや、サスペンスタッチのカーチェイスなども、じつに巧みでアルフォンソ・キュアロンの技量がしっかり見てとれる。

 実際のロンドンでロケーション撮影された映像も物語に説得力をあたえてくれる。シーンによっては、ビートルズやピンク・フロイドへのオマージュも見られ、思わずにやりとしてしまう。

 ああ、単純に見ている分には楽しい映画なんだけどな。

 原作のベクトルでいけば、もともと子供が生まれなくなった世界を外挿して、移民問題であるとか、宗教問題、テロリズム、官僚機構などの問題点をうきぼりにする社会派映画になる可能性もあったのだが、まるでうやむやになっている。

 原作から世界観といくつかの設定を引き継いで入るのだが、ストーリーはかなり改変されている。

 さまざまな問題をうまくつつける設定だったにもかかわらず、「子供の生まれなくなった世界で妊婦を安全なところに運ぶ」というハリウッド脚本術に準拠したようなテーマにしているのだが、そこから派生するドラマが場当たり的に過ぎて、感情移入ができない。

 新時代のマリアか、イブとしてキリスト教的啓示を見せる話になるのかと思えば、そうともいえないし……。

 とてつもなくすばらしい映像や編集のきらめきがあるのに、エモーションをつなぐことばが欠けているので、あれ……って感じになる。

 「子供の消えた惑星」という設定を最初は興味深く見ていたものの、原作にあった思索が背景に押しやったあげくに、居心地の悪い映画になってしまった。もしかしたら二倍くらいのシナリオとか尺があったのに、強引にちょん切ってしまったような印象だ。

 いろいろともったいないね。
  

※こちらのエントリーもどうぞ。

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