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【読書】東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン

 1963年に小倉に生まれて、筑豊で育ったリリー・フランキーの自伝的作品「東京タワー」はもうそれだけで、居心地が悪くて、なかなか読めないんだけど、ドラマだったら、まだマシかなと、録画した19日放送文を見た。

 放映はフジテレビだが、製作はKANOXだとなんで、こんなにTBSっぽいんだろう……なんて思ったら、不動産屋役で希木樹林が出てきて、ポスター前で身をよじる演出。「寺内貫太郎一家」ですか。

 それだけでなく、ドラマとして、つくづく居心地が悪い。

 いままで、ほかの地方の人間が、映画やドラマの方言がちがうから気持ち悪いとかいうのを了見が狭いなぁと思っていた。

 取り消すよ。おれ、このドラマの博多弁テーストの筑豊弁もどきが、ものすごく気持ち悪い。


 ドラマの最初で離婚届が登場。映像と停めてみると、オトンの住所が「福岡県北九州市小倉区大字紫川」、オカンの住所が「福岡県筑王郡宮原町大字宮原」とでている。

 父親は小倉で、母親は現在の若宮市あたりに住んでいる設定だ。

 ちなみに筑豊時代のリリー・フランキーの住所についてはこちらが詳しい。

 父親が話してるのは小倉のことばとちがうし、母親と家族のことばもかなり博多弁に近い。

 北海道出身の大泉洋が筑豊弁を話しているから、気持ち悪いのかと思っていたら、みんながそろって微妙にちがうことばを使っているので、だめみたいだ。

 おれも了見が狭い。

 オダギリジョー、希木樹林の主演はともかく、ほとんど隣町といってもいい折尾出身の松尾スズキが脚本を書いた映画版のほうが、いいのかなぁ。来年公開だしなぁ。

 そんな次第である種の「口直し」のために原作を読む。ああ、近年のベストセラー作品で、これほどの"ちから"を持ったものがあるだろうかと、驚嘆。

 最近は雑誌、文庫、ハードカバーを問わず、まずたいていの本を浴室に持ち込んで読んだりするのだが、こればかりは、そんなぞんざいなあつかいはできない。布団の中で読みはじめ、そのまま、最後まで読みきってしまった。

 ベストセラーだとか、同世代同郷の作者だからという、落ち着かない理由で、今日まで読んでいなかった頑迷を恥じるとともに、個人的にもいろいろあった去年ではなく、今年の今の時期だから、まぁ、耐えられたのではないか。

 テレビドラマ「のだめカンタービレ」の後枠にもこの作品が決まっているし、そのあとには映画も控えているくらいの作品。mixiでも15,402のレビューが集まっているものに対して、なにをいまさらって感じだけれど……。

 ドラマと違って、ことばが勢いよく心に入ってくるし、東京でも大分でも福岡でも、ひとつひとつのロケーションが映像としてわかる体験はもう粗暴なまでに強烈だ。

 筑豊あたりに住んだことはないけれど、あのあたりのあの時代の雰囲気はよく覚えている。福岡産のにぎやかな母親もよく知っている。

 それからテレビドラマがダメだった理由もよくわかる。あれはことばがダメなんじゃなくて、キャラクター作りがダメだし、ドラマの類型化が気持ち悪かったんだな。

 ドラマのシナリオは、父親の役割と母親の役割を混同しすぎているし、小倉の祖母と筑豊の祖母の役割をひとつにしてしまったことが、ダメの元です。

 ありきたりなエピソードに変換しつつ、子供時代のプロセスをきちんと消化していかないから、母と子のつながりが見えてこない。単に母親が死ぬから悲しいといったレベルのドラマで、親子のつながりが雑になりすぎている。どこにもなかった母親の居場所を、ともに異郷である東京にしたというよろこびがでてこない。

 さらに広末涼子の存在と東京タワー自体をフィーチャーしたことで、ドラマの焦点がぼけてしまった。「東京タワー」というタイトルだけど、それが前に出てきてはいけないのだ。

 最初の計画通り、故久世光彦が撮っていたら、変わっていたのか。

※こちらのエントリーもどうぞ。

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