【日常】神楽坂の光と影
神楽坂である。軍鶏料理屋である。午後7時である。6人の飲み会である。4人はほぼ時間を守って到着した。ひとりは担当する作家さんの都合でかなり遅れると連絡があった。
店員のひとりは台湾から来た留学生だった。ちょっとジャニーズ風なかわいい男の子だった。「え! 日本に来て半年でそんなに日本語がしゃべれるの! かわいいなぁ」H女史は彼をめでていた。
そんな中、5番目に到着したデザイナーさんはサングラスをかけていた。夜なのに。店の中は暗いのに。席についても外す気配がない。
なぜ?
話を聞いてみる。昨夜午後11時、早稲田鶴巻町を歩いていたとき、中国人カップルの男に難癖をつけられたとのこと。「おれの女にガンをつけた」みたいな中国語をまくしたてられたとのこと。顔面パンチを受けたとのこと。抵抗したり、殴り返したりするのをこらえたとのこと。警察にいったとのこと。午前4時まで、事情聴取を受けたとのこと。知人の弁護士に連絡し、刑事告訴も含めて対応してもらっているとのこと。
殴られたあざを隠すためのサングラスだったのだ。
一方、H女史は、店員の台湾人少年をかわいがっている。しかし、台湾人少年の日本語学習は半年程度だ。つぎつぎと注文をミスったりする。H女史はそれでもかわいがる。
昨夜、中国人に殴られたデザイナーさんは、うっすら不機嫌だ。
露骨に口に出したりしないのだが、台湾人少年がミスするたびに、不機嫌の薄皮が一枚ずつ、デザイナーさんの身に貼りついていく。ぴたぴたぴたぴた貼りついていく。台湾人も中国人も中華民族である。いまのひろさんが中国にいったら、中華民族をたいらげ、皇帝になれるかもしれない。
台湾人をかわいがるH女史。ミスする台湾人。不機嫌になるデザイナーさん。
あいだにいるこちらは、気が気ではない。
そういう飲み会でした。


