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【映画2007】パッチギ! LOVE&PEACE

 ワーナーマイカルシネマズ板橋4番スクリーンにてSRD鑑賞。

 自分が12歳だった1974年を舞台にしていることで、ゲイラカイトだとか、芸能人水泳大会だとか、仮面ライダーアマゾンとか、ブルース・リーとか、もうリアルに感じられる風俗がたっぷりある。

 メインのストーリーは創刊したての集英社コバルト文庫に多かった芸能界ものだよね。逆境にある女の子が、安っぽくワケありの芸能プロダクションにスカウトされる。青春スターとのはかない恋がある。裏切られたあと、芸能界でのし上がるために、プロデューサーに抱かれる。名声をつかんだもののって話。まぁ、そういうべたべたな話は嫌いではないので、印象は悪くない。

 前作でバスをひっくりかえしたオープニング。今回は京浜東北線が登場だ。この青い電車をひっくり返すのかとわくわくしたが、さすがにそれはなかった。

 残念なのは、主人公兄妹であるアンソンとキョンジャの役者が変わってしまったこと。しかも舞台は京都から東京に移っている。前作のイメージがちらつく中、うろ覚えの家族構成ではかなり混乱する。

 研修中の電車の運転士である藤井隆は、前作では塩谷瞬が演じた康介だと思っていたら、東北弁だ。話している内容がちがっていたので、やっと別人だと認識した。

 また、風間杜夫は兄弟の父親だとばかり思っていたよ。

 もともとアンソンにしてもキョンジャにしても朝鮮(韓国)語の名前を覚えるのが苦手だ。おまけに役者まで変わってしまったので、混乱しまくったわけだ。

 前作アンソンとできちゃった結婚をした桃子はいなくなっちゃうし、キョンジャはフルートを吹かないし……。キョンジャと康介の関係はうやむやになっているし……。

 済州島出身の父親が帝国の徴兵直前に逃亡。仲間といっしょに南洋に逃げるというシークエンスが、何度も挿入されつつ、話が進んでいくのは、「ゴッドファーザー Part2」を思い出させる。

 ただ、日本にたどり着いて、兄妹の父親となる部分がない。前作でもなければ、今作もない。ゴッドファーザーでは、きちんと第一作で、マーロン・ブランドが演じるヴィト・コルレオーネとマイケル・コルレオーネ(ある・パチーノ)が描かれていたわけだ。それがないから、散漫な印象となっている。

 風間杜夫が演じているふたりの叔父もその欠如を埋めるブリッジにはなっていない。

 物語の主軸は筋ジストロフィにかかったアンソンの息子、チャンスに置かれているのだが、前作よりも要素が多いだけに散漫な印象が強い。泣ける要素がちりばめられているにもかかわらず、それが有機的につながってこない。

 いたずらに下世話で、いたずらにサービス精神がある上に、乱闘シーンはむやみに見ごたえがある。さらにインサートされる戦場のシーンは圧倒的だ。南洋での前線をこの迫力で映像化した作品は滅多にない。混乱しまくった1974年を撮るより1944年パートで全編をまとめてほしいと思ったくらい。

 同時期公開の映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」をあてこする後半は、主張が強すぎてちょっと醒めてしまった。ふんだんな「映画」の力がありながら、迷走するさまは、カーナビが壊れたまま、目的地に進む大排気量の車のようだ。映画を見ているだいだのドライブ感は心地よかったものの、見終わったあと、息苦しい戸惑いが残った。

 自分を捨てた母親との和解というサブプロットを担う藤井隆の役柄も、主軸のプロットとの呼応がちぐはぐだ。

 人懐っこいグラフィティ映画で、とても楽しめたけれど、プロットの設計は拙劣だった。最初にも書いたけど、こういうのを撮りたかったら、日本にたどり着いたあとの父親の存在をきちんとクローズアップしなきゃいかんでしょう。要素をぶち込みすぎた挙句にいちばん肝心な部分を入れ忘れたような作品だった。
  

※こちらのエントリーもどうぞ。

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