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【映画2007】ブラックブック

 DVDにて鑑賞。

 近所の劇場ではうっかり見逃してしまった作品だ。ほんとうは映画館で見たかったのだが、続映していたテアトルタイムズスクエアの椅子が苦手で、いきそびれてしまった。

 今年観た作品の中で、トップクラスの評価をあたえたくなる作品だ。DVDで観て、どんな椅子でも我慢して劇場で見ればよかったと、悔悟の涙を流したよ。

 映画の売り方として、「シンドラーのリスト」、「戦場のピアニスト」の系譜上にある第二次世界大戦感動秘話としていたのは仕方ないが、一筋縄ではいかない人間の暗部をすさまじいコントラストで描いた作品であり、ありていに泣けるシーンもない。

 戦後、英雄あつかいされたレジスタンスたちの暗部と、冷酷なナチ諜報部将校の人間としての魅力を迷いなく描いている。そして、主人公を含めて、ひとりのヒーローも登場しない。

 生きることは喪失の繰り返しなのだ。戦争の中で家族を貞操を信頼を未来を財産を愛を希望を失っていく主人公、エリス。「ロボコップ」や「ショーガール」、「スターシップ・トゥルーパーズ」で悪趣味な残酷をフィルムに叩き込んだバーホーベン監督だけに、どれほどの残酷を見せてくれるかと思っていたが、映像の残酷はむしろなかった。

 だが、キーンと澄み渡り、輪郭のはっきりした無常観としかいいようがない「残酷」がいたるところにある作品だった。

 舞台も設定もちがうのだが、この映画の印象にいちばん近い作品は「インファナル・アフェア」だ。自身の存在を証明するすべてを奪い去り、敵のもとに潜入する捜査官を描いた「インファナル・アフェア」には、香港映画ならではの色彩と叙情があったけれど、「ブラックブック」には逃げ込むべき叙情さえない。

 ナチスのオフィスに潜入したエリスが、やがて訪れる戦後を不安視する同僚を慰めるため自分がスパイだと告白するシーンがある。

「すごいね。ガルボのマタ・ハリみたい。でも、マタ・ハリは最後に殺されちゃうのよ」

 死んだスパイは幸せだ。思うことができないから、喪失を嘆くこともない。しかし、死ななかったスパイは果てしない喪失の中、いまも無間地獄を生きるしかない。

 圧倒的なニヒリズムを描きながら、すさまじくエキサイティングな映画だった。プロローグとエピローグのコントラストもすさまじい。

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※こちらのエントリーもどうぞ。

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