【日常03】やまもと耳かき店
マイミクさんの日記でその存在を知り、いつかは行きたかった店が「やまもと耳かき店」である。
最初は池袋に開業。その後、渋谷、新橋、五反田、立川、秋葉原、新宿と支店を増やしている。
考えてみれば、子供のころ、「ちょっとじっとしなさい」、「いま大きいの取れそうだから」、「ほら、とれるよ」、「とれた」、「ほーら、見てごらんなさい」と、やってもらったあの体験のすばらしさは、いまでも鮮烈に覚えていることである。
耳かきをしていいのは入口から1センチ程度なんて、なまっちょろいことをいっている耳鼻科の医者もいるようだが、そんなのは妄言である。耳かきのうちに入らない。
鼓膜にぎりぎり近いところまで、ミクロの決死圏よろしく、耳かき先端を潜行させ、そこに存在する耳垢というか、耳くそというか、やっぱり耳垢といったほうが上品なそれを、デリケートかつ乱暴に、耳孔壁面をぞぞぞっとたどりながら、かきだしてもらうあの興奮を再現していただけるとなれば、それも、最近、ごぶさたな女性の膝枕でやっていただけるとなれば、一度は体験してみたいではないか。
いってみましたよ。
最近は法輪功の方々が中国語ビラを配っている池袋北口である。
30分と1時間、ふたつのコースがあると聞く。
当初は30分2,500円でお願いしてみようかと思っていたが、なみのマッサージより安い1時間4,500円というのも捨てがたい。30分増えて、2000円アップなら、いいかもしれない。きっといいぞ。知らない世界が待っているかも。
1時間、お願いしました。
1階の路面でお金を払い、地下へと潜っていく。地下は和室1畳半ほどに仕切られた半個室が並んでいる。
浴衣姿の「耳かき小町」さんがお茶とおしぼりを持ってきてくれた。
彼女からコースの説明を受ける。
耳の清掃→耳かき→耳たぶの毛そり→耳のマッサージ→(反対側でおなじ手順)→目の周りなどのマッサージ→頭のマッサージ→肩もみ→肩たたきと進行するという。
店内の仕切りはたいしたものではないから、近くの会話はそのまま聞こえてくる。店内には風俗店ではないと書いてあったが、たしかにマッサージかエステの雰囲気に近いかも。
さて、いよいよ耳かきの始まりだ。
たしかに膝枕はうれしいのだけれど、長く寝ていると、少しずつありがたみがなくなる。
耳の溝から耳孔へとていねいに耳をかいてくれるのだが、子供のころ、母親にやってもらったときのあのスリリングな快感にはほど遠い。
「もっと強くかきだして」とか「もっと、もっと深くいれて」とか、なかなかいえるものではない。いささか欲求不満で終わってしまった。
そのあとは耳たぶの毛そりであるが、電動のエチケットシェーバーでそるのだが、ちょっと物足りないものがある。
これを左右の耳でやって、ほぼ30分だ。なんだかものすごく物足りない。また、「こんなにとれましたよ」と、現物を見せてほしい。健康ランドの「垢すり」でもやっているけれど、なにかの達成感が足りないのだ。
そのあとのマッサージはまぁ、がんばっていたけれど、やっぱり、少年の日のあの「耳かき」は帰ってこないのだと、おじさんは思ってしまったわけですよ。
コースとしては30分2,500円で十分だ。小町さん、あなたが悪いんじゃない。耳かき欲をこじらしたおじさんが悪いのだ。
