【映画2008】ラスベガスをぶっつぶせ
ワーナーマイカルシネマズ板橋11番スクリーンにてSRD鑑賞。
統計を利用し、チームプレイによるカードカウンティングという手法で、ブラックジャックに挑み、ラスベガスのカジノに一泡ふかせたマサチューセッツ工科大学チームを描いた作品だ。
数学の授業ではモンティ・ホール問題が、重要なエピソードとして紹介されていて、ちょっと楽しい。
ただ、ぼくはラスベガスが好きなのである。こういう映画を見るときはふだんの鑑賞モードとちょっと変わってしまう。
ラブシーンで、裸のケイト・ボズワースなんかに目もくれず、窓の外の夜景をじっと観察して、どこのホテルでロケをしてるのかを考えてしまう。
空港からリムジンでわざわざ、フォーコーナーあたりを経由して、「ハードロックホテル」にいくのはどうよとか、つっこむ。そのあと、いきなりストリップから20キロ離れた「レッドロック」で初陣を飾るのはなにとか、「あたし、ハードロックのスイートで待ってる」とかいって、実際に愛しあうのは「プラネットハリウッド」のスイートってのは、ちがうだろうとか。また、グループの集合場所として登場する「Foxx」というナイトクラブは、おそらく「レッドロック」の「Cherry」だろう。一仕事のあとの「レッドロック」は遠いなぁ。
そんな感じで映画に没頭できなかったりもする。
登場するカジノは「ハードロック」、「プラネットハリウッド」、「レッドロック」、「リビエラ」で、「Harrah's」、「MGM Mirage」、「Sands」、「Wynn」といったストリップの中核系列は出てこない。そのあたりもちょっと寂しい。
この映画は実話を元にしているが、モデルとなったJeff Maは中国系アメリカ人であり、MITブラックジャックチームにもアジア人は多かった。ハリウッドはアジア人の功績を横取りしていると、映画ボイコット運動まで起きたそうだ。ちなみにJeff Maはプラネットハリウッドのディーラーとしてカメオ出演。主人公を演じるジム・スタージェスから"my brother from another mother."なんて、呼ばれている。
自分としては、もっともっとラスベガスが出てくる話かと思って期待していた。しかし、主人公の生地であり、MITの所在地、ボストンもかなり出てくる(MIT構内でのロケはできなかったようで、実際に登場するのはボストン大学だ)。
重箱の隅関係はそれくらいにして、映画の感想を……。
主人公はMITから、ハーバード・メディカル・スクールに進むため、30万ドルを必要とする設定になっている。だが、キャラクターの掘り下げがうまくいっていないせいか、そこそこにハンサムで才能も能力もある主人公が、ちょっと挫折して、ちょっとがんばる程度のメリハリしか感じられない。
映画では生活費も含めた奨学金全額を得られるかどうかというのが、最初の動機だが、そんなハードな規定の奨学金以外にもほかの奨学金はあるだろう。
原作の主人公にしても、恵まれない境遇というわけではない。だって、MITの学生だよ。映画化に際して、一般観客のシンパシーを得るために、ステレオタイプな主人公にしようとしたものの、裏目になったとしか思えない。
オリジナルは1990年代の話だ。そのころなら、ボストンからラスベガスに何度もいく意味もあっただろう。だが、現代はアメリカ全土にカジノが増えている。そこまでラスベガスにこだわる意味がわからない。
また、スポッター、バック・スポッター、ゴリラ、ビッグプレイヤーというMITブラックジャックチームならではの戦略もきちんと表現されていない。なぜブラックジャックをやるのか。なぜ、チームでプレイするのか。なぜ、カウンティングが有利なのか。それがはっきり伝わらないため、勝ちの醍醐味が感じられないのだ。
映画のミッドポイントは、ビジネスをしていたつもりの主人公が、熱くなりすぎて、チームを崩壊させるところになる。だが、この熱くなる動機がゆるい上に、なぜ負けたかの意味もわからない。運が悪くて負けたのに、ずいぶんな非難のされ方だとしか思えない。
「ラスベガスをぶっつぶせ」と、勇ましい邦題なわりに、やってることは、ラスベガスのはじっこで、引っかいている程度の印象なのだ。原題の「21」では、邦題として厳しいのはわかるけどね。
敵は巨大カジノなのか、カジノのセキュリティなのか、チーム内の身内なのか、それがあいまいなために、クライマックスのカタルシスもえられない。もうちょっときちんと作ってほしかった作品だね。
