【映画2008】イースタン・プロミス
池袋シネリーブル1にてSRD鑑賞。
とことん濃密な時間を堪能させてもらった。
ロンドンのトラファルガー病院に14歳の少女妊婦が運び込まれた。母体の救命ができないまま、ひとりの女の子が産み落とされた。助産婦として働くアンナは妊婦が残したロシア語の日記をもとに、妊婦の身元捜しを始める。だが、それはロンドンに巣食うロシアンマフィアの闇社会への扉でもあった。
「ヴィデオドローム」、「ザ・フライ」のデヴィッド・クローネンバーグが前作「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続いて、ヴィゴ・"アラゴルン"・モーテンセンを主演にすえたR-18の暗黒サスペンスだ。
クローネンバーグならではの鈍色の映像が、ロンドンを染める。拳銃やライフルはひとつも登場しないが、冒頭からクライマックスまで、さまざまな刃物による鮮血と傷口がちりばめられている。
ヴィゴ・モーテンセンは本作によって、アカデミー主演男優賞にノミネートされたが、それもうなずける。ロシアン・マフィアの一員として、ロシア語、ウクライナ語、なまった英語をしゃべる。
その複雑な人間造形と男ぶりには、くらくらする。冷酷に死体の指をはさみで切り落とし、組織の下っ端として慎ましやかに命令を受ける一方で、わずかにみせる人の滋味と絶望一歩手前の孤独。口数は少ないものの、一言一言に修羅場を越えてきた男の知恵がある。
この作品、「アメリカン・ギャングスター」や「インファナル・アフェア」に連なる"男がにおう"映画として、きちんと男性の客層にアピールしたほうがいいのではないか。
クライマックスは(チョイネタバレ。PCは要反転・携帯は丸見え)サウナでのヴィゴ全裸格闘シーンだ。一部のレビューで書かれているフルチンバトルなのだけれど、入墨のほか身にまとうものがない極限の状況で、全身を傷つけられながら、あがくように格闘する姿に胸を打たれる。
どちらかといえば、難解の印象があるクローネンバーグ作品の中でもシンプルなストーリーだ。また、グロテスクなバイオレンスシーンはすべて印象的だが、短めだ。しかし、シナリオから生み出される精神と組織の暴力は濃密で、それを思うだけで、息苦しくなる。


