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【映画2008】ハプニング

 ワーナーマイカルシネマズ板橋10番スクリーンにてSRD鑑賞。ネタバレを嫌うのなら読まないほうがいいでしょう。

 結局、これってヒチコックの「鳥」なんじゃないのと途中で思っていたら、ほんとにそういう話だった。

 ある日、ニューヨークのセントラルパークから始まった「ハプニング」。人間たちが突如、機能を低下させ、手近にあったもので自殺をしていく。当初は神経ガスによるテロも疑われたが、この現象がアメリカ東海岸一帯に広まるにつれ、それどころではなくなった。

 原因はまったく不明。フィラデルフィアに住むマーク・ウォルバーグはハイスクールの理科の先生だが、その授業で、アメリカの複数の州からミツバチがいなくなった理由として「科学ではわからないことがある」と、早いうちから、負け宣言。

 この現象は大都市を中心に起こっているようなので、主人公たちの逃避が始まる。度肝をぬくようなショッキングなシーンや、思わず声を上げたくなる残酷な映像が飛び込んでくる。

 このあたりの演出はさすがシャマランといった感じで、じつにおもしろい。自分はこういうタイプの破滅ものが好きなのだと思い出した。原因不明の疾病で人類が滅びを迎える中、逃亡する夫婦という状況自体が大好物だ。

 タク・フジモトのカメラと、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽で、気持ちは最高に盛り上がる。いったいどうなることかと固唾を呑んで見守っていたら……。

 いやもうこれをやっちゃうというか、あれをやらないというか、驚きましたよ。B級シチュエーションをA級風に撮るのが特徴の監督だけれど、今回はほんとにB級だったなぁ。

 ヒチコックの「鳥」にはサスペンス演出が横溢しているが、「ハプニング」はそれなりのアトモスフィアをともないこそすれ、サスペンスのかけらもなく、ショッカーどまりである。映画としては本当に腰砕けだ。

 マーク・ウォルバーグの妻を演じるゾーイ・デシャネルは、ちょっと不気味な不思議ちゃん風で、その性質が映画にからんでくるかと思ったら、さっぱりからまず、そのままだ。彼女の携帯電話には男からの謎めいた着信があるんだけど、その正体が判明するとたいした話ではなかったりする。

 予告編はたしかに衝撃的だったが、本編でなにか付け加えられたかといえば、そのままなのだ。いわば91分間の予告編を見せられたようなもの。 冒頭のシーンからいったいなにが始まるのだろうと思っていたら、ずーっと始まったままだった。この災厄の性質からいってだんだん地味になってしまうのがきびしいところ。

 ものすごく浸れるけれど、ものすごく空っぽな映画で、つまり途中で、この状況を描くためには、主人公たちさえ不要ではないかと思えるあたりがたいしたものだ。

 ただ、ヒチコックの時代、すでに「鳥」という理由のない恐怖を描いていたのに、原子力発電所をフレームに入れたり、テレビの解説者の個人的な理由付けをきちんと流したり、中途半端な「理由」をつける小心さが気になる。

  

 自信を持って空っぽな映画を作ってくれたらよかったのに……。前作「レディ・イン・ザ・ウォーター」でああいう化け物を出してくれたシャマランだから、トリフィドだの、エントだの、マンモスフラワーだの、そういう植物系モンスターを出してくれてもいいよ。

 こういう映画を撮れるのはシャマランだけなので、これからもどんどん作ってくれたらいいと思う。ボックスオフィスを見ても、とりあえず、世界興収では制作費を回収しているようだしね。

 ああ、ほめてるんですよ、こう見えても。

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