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【映画2009】スター・トレック

 新宿バルト9、8番スクリーンにてSRD鑑賞。

 自分が映画館のスクリーンで見たいものが、すべて入った映画である。生きてこの目で見られてよかった。

 自分にとって「スター・トレック」はまず、小学校のころに放送されていたオリジナルシリーズの「宇宙大作戦」だ。「原潜シービュー号」や「タイムトンネル」よりは好きだったけれど、「宇宙家族ロビンソン」のほうを愛好していたくらいかな。小学生にはスポックよりもドクター・ザッカリー・スミスだったのだ。ビバ、熊倉一雄。

 それほど愛情がなかった「スター・トレック」の記憶はむしろ、1979年(日本公開は1980年)の映画版からが鮮明になる。「IV 故郷への長い道」や「VI 未知の世界」はかなり好きだが、出演者の平均年齢は高く、本来であるなら漂うべき海洋冒険小説の香りが失せ、やんちゃな中高年のハチャメチャ旅としか思えなくなってしまった。

 後継の「TNG」や「DS9」などは、深夜のテレビでやっていたら見る程度で、積極的に追うことはなかった。

 人類は「スターウォーズ」ファンか「スター・トレック」ファンに大別される、自分は圧倒的に「スター・ウォーズ」ファンである。人生のいちばんデリケートな時期に「スターウォーズ」を注入された世代としては仕方ないことだし、老人が右往左往する「スター・トレック」より、壮大な運命のなか、若者が成長する「スターウォーズ」のほうがおもしろかった。

 そういった苦手要素が、ジェームズ・T・カーク、スポック、Dr.マッコイ、Mr.スポックの若き日を描くことで、これほど、おもしろくなるとは!!

 まず、冒頭部分で度肝を抜かれる。純粋かつ強大な敵との遭遇と対決が、パワフルかつスピーディかつ緻密に描かれているのだ。その絵を劇場で見て、「スターウォーズ」完結以来、自分がどれほどSF映画に渇望していたかがはっきりわかった。わずか一滴で、いくら飲んでも飲み足りない渇きの存在を知り、全身に染みわたる清冽な水分を、ごくごくと飲んでいく感じだ。

 SFということであれば、「バトルスター・ギャラクティカ」という秀逸なTVシリーズもあるのだが、自分は「ギャラクティカ」を神話的構成を持つ宇宙活劇としては見ていないことが、はっきりわかった。

 もちろん、多少なりとも「スター・トレック」を知るものにはうれしいサービスがたくさんある。

 USSエンタープライズのクルーたちが、ドラマのいたるところで集結してくるプロセスは胸踊るものがある。しかも、きちんと一人ひとりに見せ場があるのだ。ちょっとした笑いをともなう見せ場の数々を目にすると幸せな気分になる。さらに「ショーン・オブ・ザ・デッド」や「ホット・ファズ」など、イギリス・コメディ映画のサイモン・ペグが、スコッティを演じていたり、キャスティングもすばらしい。

 キャスティングに関しては、スポック役のザッカリー・クイントにはやられた。「HEROES」では眉毛をつなげて、連続超能力者殺人を演じていたが、耳をとがらせてバルカン星人を演じてもじつによく似合う。さらにバルカンと地球人のハーフという設定をうまく生かして、理性と感情の中で揺れ動く若いスポックのキャラクター造形をなしとげている。

 ジェームズ・T・カーク役のクリス・パインも好配役だ。傷つきやすく、スピードを愛し、教養もあるがときに果断な暴走で問題を解決する、そんなアメリカの愛する若者をくっきりと演じている。

 そして、ウィノナ・ライダーの出演には最後まで気づかなかった。「ビートルジュース」は遠くなりにけり。

 さらに「コバヤシマル・シナリオ」など、映画版でもおなじみのネタが、じつにうまく挿入されているのだけれど、そういう予備知識がまったくなくても、「ゴルディアスの結び目」を実地で演じるカークの人柄を理解するエピソードとして楽しめる。

 まるで化学工場のような宇宙船内部なども楽しいし、テレビシリーズにつながるような、ちょっとダサいユニフォームも素敵だ。

 ドラマがすばらしく感動的なのは、カークとスポックの友情の起源を主軸に描いているからだ。最上の「少年ジャンプ」漫画のような小気味よさもある。さすがはスラッシュ(やおい)の始祖的作品でもある。

   

 旧シリーズとの齟齬になりそうなところは、愛すべきSF的ご都合主義で回避しているし、ある種の大雑把さは旧シリーズへのオマージュでさえある。

 また、ILMのSFXやベン・バートのサウンドデザインなど、ひさしぶりの宇宙活劇をゴージャスに彩ってくれる。

 まさか、自分がこれほど「スター・トレック」映画を好きになるとは思わなかったのだが、これはすべて「スター・ウォーズ エピソード4」と相似の構造を持っているからなのかもしれない。ここからは、ネタバレになるので、ご用心。

 どれだけ似ているか、目立ったところを1ダースほど列挙する。

1・冒頭での敵宇宙船の巨大感の誇示
2・救命艇で物語の鍵となる女性が脱出
3・荒野で、主人公が暴走する
4・ロングショットの荒野の彼方にSF的景色
5・酒場でのキャラクター紹介
6・当初は反発しあっていた男たちが友情で結ばれる
7・父性的存在が、敵宇宙船にとらわれ、殺される
8・ゆかりのものの目の前で、母星を破壊
9・微妙な恋愛三角関係
10・ワープしたさきが敵宇宙船の直近
11・天体を破壊しようとする巨大宇宙船迎撃が最終目的
12・最後は勲章授与

 まるで「スターウォーズ」モデルに「スター・トレック」テキスチャーを貼り付けたようじゃないか。

 しかし、自分はこれをパクリだとかいって非難するわけではない。映画監督としての手腕はジョージ・ルーカスよりもJ・J・エイブラムスのほうがずっと上だし、ルーカスがジョゼフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」から英雄冒険談の母型を持ってきたように、エピック(叙事詩)としての構造は、どうしても似ざるをえない。

 それどころか、歌舞伎や時代劇、ウェスタンなど、定型を踏み外してはならないジャンルもあるのだ。

 「スター・トレック」のテレビシリーズがなければ、この映画は生まれなかったし、「スターウォーズ」がなくてもこの映画は存在しなかっただろう。そういう意味では今回の映画は「スターウォーズ」と「スター・トレック」の幸せなマリアージュとしかいえないのだ。

 そんな中、論理ペルソナのスポックに眠るエモーションと、感情ペルソナのカークに眠る判断力が磁石のN極とS極のようにぴったりとつながるカタルシスはえがたいものだ。

 ともかく「スターウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」の完結で失ってしまった終わらないシリーズへの飢えや、宇宙SF活劇への飢えを癒してくれた功績は大きい。ありがとう。ほんとうにありがとう。

 Live long and prosper!

監督製作:J・J・エイブラムス 原作:ジーン・ロッデンベリー 脚本製作総指揮:ロベルト・オーチー 脚本:アレックス・カーツマン 製作:デイモン・リンデロフ 製作総指揮:ブライアン・バーク/ジェフリー・チャーノフ/アレックス・カーツマン/エドワード・ミルスタイン/ビル・トッドマン/ポール・シュウェイク 音楽:マイケル・ジアッキノ 
キャスト クリス・パイン ザカリー・クイント エリック・バナ ウィノナ・ライダー ゾーイ・サルダナ カール・アーバン サイモン・ペッグ レナード・ニモイ 他
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[スタートレック] ブログ村キーワード  1966年の初放送以来、5本のTVシリーズと10本の劇場映画が製作され、40年以上に亘って我々を楽しませてくれ... [詳しくはこちら]

コメント

J.J.エイブラムスが、監督なんですね~。
SF物って、全然見ないのですが、JJの物なら見てみたいかも
って、思いました。
そう言えば、彼はまだ「LOST」を手掛けているのかしら?
今、「LOST」は凄い展開になっているので、シーズン5を
早く見たいです(笑)。

■カオルさん
 いたるところで、J.J.エイブラムス演出が際立っている作品です。ものすごく刺激的ですから、映画館で観るほうがおもしろいと思います。

 LOSTはシーズン2までしか見ていないのですが、データを見ると、J.J.は最新シリーズも脚本を含めて、参加していますね。

丁度お友達と映画観たいねと言っていたので、観に行ってきますね♪

JJ、まだLOST手掛けていたのですね。
シーズン2で失速しちゃったので、もう参加していないものだと
ばかり思っていました。
LOSTは今のところ全シーズンDVD買って観ていているのですが、
シーズン3の中盤から、凄い展開になってきていますよ。
シーズン4は、かなり盛り返してきて、本当に凄いです。
アメリカ在住者の情報によると、シーズン5は更に凄いらしい
です。
とうとう来シーズンで終了なので、悲しいです。

 お書きになられているとおり、LOSTはシーズン2の失速が残念で、距離を置いてしまったんですよ。最近のシーズンがすごいという噂もちらほら聞いているんですが……。

 完結のタイミングでもう一度挑戦してみます。

レンタルDVDで見ました!
なんで映画館で見なかったのか、後悔・・・
大きなスクリーンで見たかったです。
映像の迫力、人間ドラマの作り、J.J.エイブラムスらしさを
堪能しました。
もう、本当に良かったです、この映画!
勢いついでに、DVD買ってしまいました。

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