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【映画2010】彼岸島

 ワーナーマイカルシネマズ板橋10番スクリーンにて鑑賞。

 「火山高」のキム・テギュン監督なので観にいったけれど、あまりにもひどい脚本にあきれてしまった。原作もこんなにひどい設定なのかと、wikipediaでざっとチェックしたけど、それなりにしっかり作ってておもしろそうじゃないか。


 脚本家を確認したら「MW-ムウ-」の人だった。おれの2009年ワーストワン映画じゃないか。やっぱりね。ていうか、それを知っていたら、見に行かなかったかもしれない。

 この映画で感心したのは、画面の中にどんなに人がいても、キャラクター2人しか動かせない脚本能力だ。主人公たちは、"ヒーロー"、"アンチヒーロー_"、"ヒロイン"、"デブ"、"学者"というゴレンジャーパターンに、"いじめられっこ"のおまけ付きの6人で島に乗り込む。このメインメンバーがどんな危機的状況にあっても、最大で2人しか動かない。

 全員が閉じこめられている牢獄で「吸血の犠牲者をひとり、地面に書いた丸の中に入れてみろ(意訳)」と、醜悪な老婆がおどす。

 普通だったら、ヒーローが中心に出て、「おれが行く」とかいうのが定跡だ。しかし、"ヒーロー"は動かない。動くのは"学者"と"デブ"のふたりだ。"いじめられっこ"を押さえつけ、「おれたちのかわりにおまえが食われろ(意訳)」と、地面の丸に押し込もうとする。

 なにしろおそろしい状況である。恐怖のあまり、そういう卑怯なことがあってもいいだろう。ここで"ヒーロー"が登場するかと思ったら、"ヒーロー"はまったく動かない。彼の表情をぬくショットもない。背景画として存在するだけだ。

 大声で叫ぶ"いじめられっこ"、どうなるかと思っていたら、"アンチヒーロー"が登場する。「おれが代わりにいく(意訳)」といって……。

 こうなったら、いくらなんでも"ヒーロー"が動いてもいいだろう。しかし、"ヒーロー"は動かない。動くのは"ヒロイン"だ。"いじめられっこ"が犠牲になりそうだったときには、壁の花だったヒロインがいきなり「そんなこと、やめて(意訳)」と叫ぶ。ちなみにこれ以降、"デブ"と、"学者"が、映画に参加することはない。ふたりともゲームでいえばNPC。怪獣映画でいえば自衛隊のひとり程度の存在になってしまう。

 いくらなんでも女の子が泣きわめけば、"ヒーロー"も動くだろう。しかし"アンチヒーロー"が吸血鬼の巣窟に連行されても、"ヒーロー"は動かない。ひとことも発さない。

 "ヒーロー"が動き出すのは、"アンチヒーロー"が、機転をきかせて、看守役の吸血鬼の腰から、牢獄の鍵を落としてからだ。

 自分が逃げられる状況になってから、ものすごく饒舌になる。「おまえら、"アンチヒーロー"を救わないのか(意訳)」とか、「おれは吸血鬼になった"いじめられっこ"を救えない(意訳)」とか、「ヒロインを救うのが感情のある人間だろう(意訳)」とかいって、人を責めるときだけよく動くのだ。

 これだけ、主人公がストーリーのブレーキになる映画も珍しい。

 そんな主人公があるシーンで唐突に刀さばきが上手になる。そこで、「すごい潜在能力だ(原文ママ)」と、初対面のおじさんに感心される。あんた、さっき会ったばかりで、どうして潜在力とかいえるんだ。

 あんたはスカウターでも持ってるのか。

 いままでは適当な意訳だったが、「すごい潜在能力だ(原文ママ)」は、ほんとうに初対面のおじさんがいったんだよ。

 ほかにも身長2メートルを越える「師匠」とかいうスラムキングみたいなやつが動かない。CGばりばりで大迫力の邪鬼(オニ)が暴れまくり、水川あさみが必死に戦っているのに至近距離で腕を組んだまま、それを見守っている。

 いったいなにをやるのかと思っていたら、部下が「撤退しましょう」と声をかけた途端「撤退(原文ママ)」と号令をかけるだけだった。ここでも動かせるキャラは最大2人という、この世界のルールは生きている。

 普通ね。自分で作ったキャラクターが、あるシチュエーションに立会ったとき、どんなことを考え、どんな行動をするのか、考えるのかが、脚本家の仕事じゃないか。

 吸血鬼たちに追われているというシチュエーションだが、脚本はそういう状況も忘れている。昼間は旧日本軍の施設の中で、「しっかり休みをとっておけ」。夜になったら、山中で焚き火を燃やし「しっかり休みをとっておけ」。おまえら、休みをとりすぎです。

 さらに山の中で唐突に「レジスタンス(原文ママ)」が現われる。どんな生活をしているのかとおもったら、富士五湖のどこかのキャンプ場みたいに、美味しそうなものを食べながら、火を煌々とたいている。

  

 そんなキャンプファイアーの中で、「すごい潜在能力」の主人公は、真剣をかまえ、目隠しをして、忍者みたいなレジスタンス5人とトレーニングをしている。いつの時代のフォースの練習だよ。ちゃんばらの練習で、目隠しするの、禁止しようよ。

 ときとして、映画の設定を忘れていることも多い。冒頭で殺されたサラリーマンが、吸血鬼の返り血を浴びただけで、吸血鬼になってしまうのに、その設定が生かされることはない。ていうか、みなさん、吸血鬼の返り血をよく浴びていらっしゃる。

 全体に説明調のセリフを大芝居で演じているからくどいばかりで、辟易するし、手持ちカメラを使うときは揺らすのが当たり前とばかりに、わざとらしく揺らす。まるで、ひとむかし前の特撮映画の地震のシーンみたいだ。揺らさないとごまかせないんですか。

 同じアジア監督の吸血鬼アクション日本映画として、話が意味不明だった「ラスト・ブラッド」よりも見ごたえはあったけれど、もうちょっと脚本のクオリティをあげてほしかった。

監督:キム・テギュン エグゼクティブプロデューサー:三宅澄/イ・ジュンホ 原作:松本光司 脚本:大石哲也 撮影:釘宮慎治 美術:中澤克巳 編集:森下博昭 音楽:澤野弘之 主題歌:9mm Parabellum Bullet 衣装デザイン:宮本茉莉 照明:田辺浩 装飾:大坂和美 録音:野中英敏 助監督:村上秀晃 
キャスト 石黒英雄 渡辺大 水川あさみ 山本耕史 弓削智久 森脇史登 足立理 半田昌也 瀧本美織 他
※こちらのエントリーもどうぞ。

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