【映画2010】インビクタス/負けざる者たち
ワーナーマイカルシネマズ板橋7番スクリーンにてSRD鑑賞。
もはや戦う詩情といってもいい、イーストウッドらしい清潔で直球の筆致で、国家と差別とスポーツを正面から描いた作品だ。
1995年、南アフリカで開催されたラグビー・ワールドカップで初出場の南アフリカのラグビー代表チーム「スプリングボクス」が初出場初優勝を成し遂げたかげには、前年に南アフリカ大統領に就任したばかりのネルソン・マンデラの存在があった。
驚くばかりにストレートなドラマ作りだ。白人社会から徹底的に弾圧されたマンデラが信念に基づき、復讐ではなく寛容をもって、白人のスポーツであるラグビーを国家のスポーツとして、"利用"していく。まるでマンデラを意志のある触媒として、人々の心に変化をもたらすエピソードが積み重ねられる。
自分の警護官の中に、かつては黒人を弾圧した白人公安を加えたり、ナショナルチームのチーム名、シンボル、カラーを変えようというスポーツ評議会の決定を変えさせたり……。白眉はマット・デイモン演じるスプリング・ボックのキャプテン、フランソワ・ピナールとの対面だ。
マンデラは具体的になにをしろとは指示しない。ことばと存在感で自分の中に未来の南アがあると示すだけなのだ。ここから、ピナールとマンデラの心が共鳴していく。マンデラが大統領府の白人スタッフに考える時間と余地をあたえたように、ピナールもチームメイトに対して、決して大声をあげず、変化のときをあたえるのだ。
マンデラのことばで、胸をうつものはたくさんあるのだが、そのひとつに立場が変わった黒人が旧支配層の白人に「恐怖をあたえてはならない」というものがあった。マンデラの過去を考えると、このことばは胸を打つものがある。人でも国家でも不安に覆われると、迷走が生まれる。恐怖、不安、復讐の応酬からはなにものも生まれないのだ。
別れた妻や娘との摩擦など、マンデラの人間としての苦悩もはぬかりなく描かれているのだが、静かなる奇跡を生むメシアとしてのマンデラの存在感が絶妙で、その姿をみるだけで静かに興奮してしまう。
なによりも史実に約束された勝利のドラマだから、その興奮が壮大な奇跡として結実していくさまを見るのは、なにより感動的だ。それにしても、これだけしっかりとラグビーの試合を描いた映画っていままであったっけ? スタジアム中央で試合をみているようだったよ。
ドラマとしてはかなりシンプルで、好みが分かれるところもあるかと思うが、この堂々たる描写を堪能できただけで、最高だ。
キャスト モーガン・フリーマン マット・デイモン スコット・イーストウッド ラングレー・カークウッド ボニー・ヘナ 他


