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【映画2013】シネコン至上主義#12

【君と歩く世界】、【恋の渦】、【HK/変態仮面】、【舟を編む】をオススメ。

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

お金を払ってみた映画作品の推薦文です。映画を映画館で見る理由となる3つの要素について五点満点で採点しています。星が少なくてもお金を払って見るに足ると評価した映画だけを紹介しています。ここに紹介している作品は甲乙つけがたいものばかりです。気になった作品なら、ぜひスクリーンでご覧になってください。

「スクリーン必然性」3D効果や臨場感、サウンドなど、家庭のテレビ画面でなく、映画館で見る必然性を示します。
「インストール強度」人生の一部として、自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。
「おっぱい指数」映画に必要な裸の女優の割合を物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。





【君と歩く世界】

スクリーン必然性 ★★★★
インストール強度 ★★★★
おっぱい指数   ★★★★★


■推薦文
両足を切断したマリオン・コティヤールの衝撃的な映像と「君と歩く世界」という前向きなタイトル。それだけから判断し、これを「泣ける」映画と思って、劇場に足を運ばないのはもったいない。お涙ちょうだいの難病ものとか、努力と根性の障害ものをみなさんに紹介するつもりもない。

邦題はへっぽこだけれど、原題は「Rust and Bone (錆と骨)」ってボクシング用語で唇が切れたときの血の味だそうだ。なるほど。この映画のテーマをよく表現している。肉体的にも精神的にもだれもがかかえる欠如や空虚をこんなに瑞々しく、こんなに力強く描かれてはたまらない。

泣く映画ではない。生きる決意に惚れる映画だ。"号泣"とやらをする映画ではない。強くて美しいマリオン・コティヤールに惚れ直す映画だ。

撮影は、REDのカメラを使ったデジタルだけれど、空気と光を捉えた映像の数々、とくに決めの絵は最高で、はじめて「グレート・ブルー」を映画館で見たとき、その最良の部分に匹敵する名シーンが思い出される。

肉体の欠損を軸に男と女の肉体の存在をつくづく感じさせてくれる。

エンドロールで最初に名前が出てくるのはマリオン・コティヤールだが、事実上の主人公は格闘バカのアリを演じるマティアス・スーナールツだ。格闘技のことばかり考えていて、その肉体性を武器に男なら嫉妬したくなるくらい天然にモテるのだが、あまりにも無垢すぎて、生きることが本当に不器用な男だ。事件を起こし、人に迷惑をかけ、流れものの暮らしをしている。

男と女の平坦ではない人生のある時期をみごとに切り取った作品でもある。それが事故によって、両足をうしなった時期であったとしても、それが人生の一部なのだと感じさせてくれる。その前もあり、その後もある。小説を原作にしたフィクションであるにもかかわらず、フランスにいけば、登場人物のすべてがいまも生きていると感じられるのだ。

ここにあるのは命の凱歌だ。鑑賞して時間がたっても思い出すたびに胸が熱くなる。


■採点理由
映し出される映像には何度も息を呑んだ。これはだったら「スクリーン必然性」は★★★★だ。強さってなにかということをひしひしと感じさせてくれるドラマには「インストール強度」を★★★★あげたい。両足を失っても露出は多い。しかもその露出が映画に貢献しているから、「おっぱい指数」は★★★★★あげたい。


■以下ネタバレ
敬愛する映画評論家の清水節さんと、この映画についてtwitterでやりとりしたとき、浮かび上がったのは、この映画に内包される梶原一騎的世界観だ。ある意味、完全に成功した「愛と誠」的内容なのかもしれない。肉体から生まれる詩情が濃厚に漂っているのだ。

IMDbによれば、もともとベッドシーンの撮影が嫌いだったマリオン・コティヤールだが、この映画ではじめて、それを楽しんだという。役に入れこんでおり、この映画におけるセックスがとても重要であることを理解していたためだが、彼女自身の再生がアリとのセックスをきっかけにしているのもこの映画の描く美しさだ。

セックスによる肉体の確認を経たあとの名シーン。手の動き、体の動きに総毛立つ表現が、堂々たる映画の推進力になっていた。

こういう肉体性の強いラブストーリーを見ると、主人公の男、アリに対して嫉妬さえもできない憧憬が生まれてしまう。ほんとに純粋で頭が悪くて、肉体力が卓抜なやつにはかないません。マリオン・コティヤールのツンデレぶりもたまらなかったけど。





【恋の渦】

スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★★


■推薦文
これは濃かった。熱かった。

冒頭、ほんとにむかつくいまどきの若者たちだったのに、彼らのつくづく安っぽい恋愛模様に対し、固唾を飲んで見守ることになろうとは……。大いに笑い。大いにのめりこんだ。舞台劇の映画化としては最高に成功している。

「モテキ」の大根仁監督が自身のtwitterで紹介したことが、鑑賞のきっかけだった。ワークショップのスタッフやキャストを使って、きわめて低予算で撮影した「自主制作映画」なのだが、その仕組が熱量となって作品に貢献している。プロフェッショナルの自主制作映画すげえとしかいいようがない。

劇団ボツドールの三浦大輔の芝居をもとに作ったとのことだが、4つのアパートに5人の男、4人の女。そのシャッフルがくりかえされるうちに、それぞれの立場と愛がめくるめく変容を見せていく。有名俳優はひとりも出てこないが、だからこそ、濃密なリアリティが立ちのぼってくる。

スクリーンであるにもかかわらず、過去一年見てきたどんな芝居より舞台的体験を堪能できたかもしれない。

「シネコン至上主義」というタイトルのページで、上映機会がきわめて少ないこんな映画を紹介するのは逡巡したが、このクラスの映画を紹介しない訳にはいかない。

東京では7月6日から、渋谷シネクイントでのレイトショー公開が決まったという。福岡でも7月に上映されるというし、ほかでもまだまだ、上映の機会があるかもしれない。なによりもいくつかの理由で、DVD化が難しそうな作品だ。見られる機会に見ておくべし。

“自主制作映画”である「恋の渦」が多くの人に見られるのはすばらしいことです。

■採点理由
DVDなどのソフト化が困難な作品だからこそ「スクリーン必然性」は★★★★★だ。人生を変える作品ではないけれど、見ないと後悔する作品だから「インストール強度」は★★★。セックスを暗示するシーンはたっぷりあるが、露出は下着までだから「おっぱい指数」は★★。


■以下ネタバレ
三浦大輔脚本作品といえば、映画では「ボーイズ・オン・ザ・ラン」、「裏切りの街」を舞台で見たくらいしかないが、どこにでもいる人間たちのこんがらがった人間模様の中から、どうしようもなく浮かび上がってくる残酷さや業が、きりきりと観客の心をえぐってくるものだった。

こちらもそんな作品だった。最初から最後まで、裏切られて裏切られて裏切られて……。まさしく恋の渦だったよね。みんな身に覚えのあることばかりだよね。現在進行中の人もいるだろうけど、それが生きてる実感だよね。





【HK/変態仮面】

スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★★
おっぱい指数   ★★


■推薦文
こういうのがクールジャパンの最適化コンテンツですよ。

快心作。最初から最後まで笑い続けた。高校や大学のバカ系映研で量産されてきたバカ映画の完成形だ。同監督の作品では「コドモ警察」とは雲泥の差だ。男って50歳になっても、こういう作品が好きなんだ。

女性の使用済みパンティをかぶると、人体の隠された能力が開花して、悪を倒すという馬鹿馬鹿しいネタの一点で、とことん迫ってくるまじめにバカバカしい映画だ。

この映画に対して、説明セリフの連続であるとか、本当の変態らしさが足りないといっても仕方がない。変態といってもパンツかぶって、ブリーフ伸ばしてるだけのなんちゃってヘンタイで、じつは連載元の「週刊少年ジャンプ」カラーが強いため、友情努力勝利的ニュアンスが濃厚だ。説明セリフも変態度の浅さも覚悟のうえで、映画ごっこをしている感じがたまらないのだ。

「仮面ライダー フォーゼ」に出演していた清水富美加が出演すると聞いて、この作品を楽しみに待っていたのだが、こういうチャイルディッシュな内容で、それなりの熱さを見られたら、おれは満足するね。

もともとは小栗旬の企画だったそうだが、完成作品からは「脚本協力」とのみ、クレジットされている。片瀬那奈も変態仮面の母親としてのSM女王を嬉々として演じているが、パブリシティにはほとんど出てこない。

観客席にも女性は多かったし、デートムービーとしてもよろしいのではないでしょうか。


■採点理由
映画館で笑うのがいいんですよ。こういう作品は。だから「スクリーン必然性」は★★★。自分にインストールされたバカな部分をリフレッシュせてくれるから「インストール強度」は★★。生おっぱいは出ないけど、あまたのパンツと片瀬那奈のSM女王の悪乗りで「おっぱい指数」は★★あげます。


■以下ネタバレ
冒頭から、「スパイダーマン」のタイトルパロディであったり、途中で唐突に「スパイダーマン」演出を見せたり、目のデザインが「スパイダーマン」ぽかったり、どうしてこんなにスパイダーマンを意識しているのやら、さっぱりわからないけど、まあ、楽しいからいいか。

アメリカでは週末に、ホモソーシャルな香り漂うコメディ映画を見に行く男たちというが多いと聞きおよぶが、日本でもこういう映画が増えてくれたらいいのに……と思う。映画館の闇は神聖なものではない。テレビのバラエティから、ちょっとだけ悪乗りした映画も悪くないでしょう。





【舟を編む】

スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★


■推薦文
ライフワークとはなにかという映画だ。

だれもが当たり前に存在すると疑わない国語辞書が、生身の人間の膨大な時間と、それぞれの個性、そして、気が遠くなるほどの丹念な作業によって生まれたことをていねいにトレースしていく。

知的共同制作物をつくる人々の織りなす静かなる叙事詩と言っていいだろう。

辞書という端正な偉業を完成させるまで、複数の人生がからみ、膨大な時間と労力が注ぎ込まれるのを目の当たりにすれば、ぼくらの胸も熱くならざるをえない。

さりげない青春映画の要素もあるし、松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョーというキャスティングはほんとにうまいし、それぞれ、従来の役柄とはちょっとちがうイメージをよく引き出している。石井裕也監督のうまさには、感心した。これなら、多くの人におすすめできる。

辞書を作るという作業はもちろん大変だが、小道具や衣装、ロケ、撮影など、この映画にかけた手間の数々を見ていると、映画をつくるというのも同様に、人生をかけた共同作業なのだと、感心してしまう。


■採点理由
時間を描いた作品というのは、テレビより映画館のほうがいいものだから、「スクリーン必然性」は★★★。多くの人にとって、辞書を見る目が変わるだろうから「インストール強度」は★★★。思春期にはエッチな単語を探して楽しむ辞書だけど、そういう恥ずかしい描写はないから、「おっぱい指数」は★。


■以下ネタバレ
ものが作られていくことと、人の死というバランスが、絶妙だったね。

★今回とりあげなかった映画
おすすめの映画をなるべく紹介したいのですが、今回、いろんな理由で紹介しなかった映画は以下のものです。

「コズモポリス」 おもしろかったけど、ぼくの教養じゃ把握しきれないクローネンバーグ作品。

「ライジング・ドラゴン」 ジャッキー・チェン映画の中ではベストとはいいがたいが、引退記念興行としては楽しい。

「桜、ふたたびの加奈子」 ジャンル不明の転生テーマの感動怪作。嫌いじゃないし、クライマックスのツイストには「やられた」と思ったけど、時間がたつうちに中森明菜の「愛・旅立ち」みたいな印象になった。

★近況
新しく買い換えたスマートフォン「XPERIA Z」が快適すぎて感動しています。1年前のLTE機種にくらべて、バッテリー持ちはよくなったし、「7notes with mazec for android」アプリをインストールしたので、おじさんにも安心の手書き入力。以前より長文のメールもストレスなく書けるようになりました。

最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

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