« シネコン至上主義#13 | メイン | シネコン至上主義#15 »

【映画2013】シネコン至上主義#14

【セデック・バレ】、【きっと、うまくいく】、【建築学概論】、【中学生円山】をオススメ。

「水道橋博士のメルマ旬報」で連載中の「シネコン至上主義――DVDでは遅すぎる」のバックナンバーです。

お金を払ってみた映画作品の推薦文です。映画を映画館で見る理由となる3つの要素について五点満点で採点しています。星が少なくてもお金を払って見るに足ると評価した映画だけを紹介しています。ここに紹介している作品は甲乙つけがたいものばかりです。気になった作品なら、ぜひスクリーンでご覧になってください。

「スクリーン必然性」3D効果や臨場感、サウンドなど、家庭のテレビ画面でなく、映画館で見る必然性を示します。
「インストール強度」人生の一部として、自分の中にどの程度インストールされるかの目安です。
「おっぱい指数」映画に必要な裸の女優の割合を物理的なものだけでなく、色気も含めて評価します。

今回よかった映画の多くが尺の長い作品で、それを見るのも大変だったけど、その尺をしのぐ感動がありました。





【セデック・バレ】

スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★★★
おっぱい指数   ★

■推薦文
泣くとか、笑うとか、そんなレベルではない。文化の衝突とは、最後には人としての誇りと尊厳の激突になるということを、えがたい歴史の教訓から問いかけてくる魂の映画だ。

日清戦争後、日本が統治することになった台湾の先住民族、セデックたちが日本人に対する反乱を起こした。霧社事件といわれるその反乱はwikipediaによると、140人の日本人の惨殺から始まり、壮絶な戦闘のあと、700人の暴徒が死亡もしくは自殺して決着したという。

台湾先住民の多くには、異部族の首を狩るという風習があり、その首を村に集めて飾る風習がある。

映画全編を通して、その風習は否定されることはない。それどころか、先祖から受け継いだ伝統として、疑問の余地なく、受け継がれている。

そこに"文明"とともに現われたのが、日本人である。日本人は当然、首狩りを禁じ、先住民を宣撫していく。しかし、ふたつの民族の間の摩擦が、やがて、熱を帯び、凄まじい反乱の炎と化す。

野蛮であるとはどういうことか、誇りとはなんであるのか、人の尊厳はきれいごとのお題目ではなく、命をかけて、勝ち取るものであること。

凄惨といってもいい残酷映像、アクション映画としても一級の見せ場の連続とともに、生きて主張することの熾烈さが伝わってくる。

なによりもすばらしいのはセデックの族長であり、反乱の主導者、モーナ・ルダオの存在感である。演じたリン・チンタイは、役者ではなく教会の牧師と聞いて驚いたが、彼の表情、彼の立ち姿のすべてが、この映画の説得力となっている。

なぜ、負けるとわかっている戦いを決意したのか。それが首狩りという残酷な風習であっても、文化が文化を裁く訳にはいかないこと。人を追いつめることの非道。その意味がびんびんに伝わってくるのだ。

■採点理由
こんなに濃密な映画をお茶の間で見る意味がないし、第一部と第二部を合わせて276分という上映時間こそが劇場で見る理由になるから「スクリーン必然性」は、★★★★★。自分の中の誇りとはなにか、民族とはなにかを考えざるをえないから「インストール強度」は★★★★★。おっぱいどころじゃないから、「おっぱい指数」は★。

■以下ネタバレ
一人の男の成長と部族の運命、そして、立ち上がるまでを描いた第一部がとにかくすばらしい。一方で底なしのゲリラ戦を見せる第二部はすばらしいアクションシーンの連続であるものの、悲劇の物量に辟易する部分もある。

また、史料から想像する事態とくらべ、映画的な誇張表現が強くなってしまった観もある。それにしても追い詰められた日本軍が化学兵器を使ったり、部族同士の敵対関係を利用して、殺し合いを奨励したりと、現代史において世界に遍在する戦争の悲劇が圧縮された形で見せつけられるのだ。

これは陳腐な反日のドラマではなく、歴史から生まれる体験を語り伝える映画である。

この映画の救いは、エンドロールで日本と台湾のキャストやスタッフが混ざり合って流れることにあるのだ。

【きっと、うまくいく】

スクリーン必然性 ★★★★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★★


■推薦文
Aal Izz Well!!!

すばらしい。すばらしい。すばらしい。なんだか、クレージー映画の最良の部分が21世紀に蘇ったようだ。尺の長さも「クレージー黄金作戦」みたいじゃないか。インド映画のエキセントリックさよりも、普遍的な信念の豊かさが心を満たす至福の時間だった。

長時間で歌に踊りが混ざって、さまざまな土地でロケをする、いわゆるマサラ・ムービーの特徴がしっかりありながら、往時のハリウッド映画や日本の映画黄金期の楽しさと共通項が多い娯楽映画の到達点だ。

「三人のバカ(three idiots)」という原題に最初はピンとこなかったが、エリート大学を卒業後、行方がつかめなかった友達を探す旅と、学生時代の思い出が並行して描かれる中で、主人公三人のバカさが、もういとしくていとしくてたまらなくなる。

一部と二部でみせたダイナミックなツイストがほんとにうまかった。インド映画ならではの長尺で魅せるストーリーテリングは、凡百のものじゃない。

映画のデジタル化って、いろいろいわれているけど、世界中のいろんな映画が褪色したフィルムではなく、この色彩と鮮度で堪能できるのなら、感謝するばかりだよ。クライマックスシーンの美しさ。インド映画のロケ撮影ならではのマジックだね。

最初にクレージー映画を例えに出したけど、いまの日本にこそ、こういう映画が必要だと思う。いまは「信じることが大切だ」と説きながら、映画そのものを信じていない映画が多いのだから。


■採点理由
この素晴らしい娯楽大作をお茶の間で見るのはもったいないから、「スクリーン必然性」は★★★★★。ほんとうにすてきなことを伝えてくれるけど、色んな意味であとを引かないから、「インストール強度」は★★★。肉感的なアンジェラ・アキみたいな主演女優が、なにげなく色っぽいから、「おっぱい指数 」は★★とサービス。


■以下ネタバレ
きわめて脳天気に作っているように見えて、表層的な学歴批判だけでなく、自殺や貧富の差、介護の問題、グローバリズムなど、社会の背後にある陰をくっきりしたコントラストとして、明るい光の中に織りこませ、ドラマの輪郭をはっきりさせているところなんて、ほんとうにうまい。

それでいて湿っぽくしない展開がつくづく嬉しくなりました。





【建築学概論】

スクリーン必然性 ★★★
インストール強度 ★★★★
おっぱい指数   ★★

■推薦文
あのとき、あと一歩が動けなかったこととか、あのとき、あと一言がいえなかったこととか。

そういうもどかしい思いは、50歳というこの歳になってもいくつかある。多少の経験をもとに、昔よりはうまくできるようにはなったけど、あのときの悔しさは上書きできない。登場人物が再集合しても、書きなおすことなく消せないファイルとして閲覧するだけしかできないのだ。

そんな取り返しのつかないことを苦く狂おしく思い出させてくれる映画だ。

ああもうやんなっちゃうなぁ。

韓国では大ヒットした恋愛映画だ。カメラは思春期と大人のふたつの時代を往復しながら、思春期にしかありえない行動と大人でしか感じられない悔恨を、デリケートかつ的確に描いている。

セリフやちょっとした小道具で描かれる伏線がいちいちうまい。

うまいのは建築学科の学生の恋愛を、建築士になったいま反芻するという設定で、一件の家の建築の過程を男と女のコミュニケーションの形として、目に見える形にしていることだ。

いろいろいわないよ。とにかくみてください。見て、心の底にしまってある後悔をひっぱりだして、転げまわってください。


■採点理由

涙を流すなら、映画館の暗闇が必要だから、「スクリーン必然性」は★★★。これはインストールしてある個人的な記憶をアップデータする強烈なアプリだから、「インストール強度」は★★★★。露出は皆無だけど、なにか甘酸っぱい汁がでそうだから「おっぱい指数」★★。


■以下ネタバレ

再会する初恋映画の中で、この映画が絶妙なのは、変えられない自分たちの運命に自覚的だということ。本当にほろ苦くて、つらいものです。自分に置き換えて、再会なんてしないほうがよかったとさえ思ってしまう。それでも会わなければもっと後悔したかもしれない。ああ、じたばたしちゃうじゃないか。

【中学生円山】

スクリーン必然性 ★★
インストール強度 ★★★
おっぱい指数   ★★★


■推薦文
宮藤官九郎監督映画の中では、一番好きだった。最近では「ムーンライズ・キングダム」にテーストが近いと思った。

フィクション(妄想)とノンフィクション(現実)の狭間を絶妙に描きつつ、「色即ぜねれいしょん」や「グローイングアップ」シリーズに通じる恥ずかしさの至福を大人計画っぽく大ネタ小ネタ満載で描いていた。

中二の妄想や万能感とリアルとのバランス、映画的記憶が渾然一体となって陶酔させてくれる。

クドカン作品好きなら、ぜひ。

■採点理由

映画的というより演劇的なリズムと空間だから「スクリーン必然性」は★★。これからインストールされるというより、インストールされたものの確認作業が多いから「インストール強度」は★★★。乳首こそ出ないものの、あのヌーブラパラダイスに免じて、「おっぱい指数」は★★★


■以下ネタバレ
自分の舌で自分のチンコをなめるというひとりフェラチオが、冒頭から重大なモチーフになっているが、メルマガをお読みの方なら、ご存知のように園子温監督はその不可能を可能にした男である。

その上で「舐める感覚はあってもなめられる感覚は感じられなかった」という、当たり前といえば、当たり前すぎるネタばれを知ってしまったから、この映画の魔法は解け気味になってしまった。

★今回とりあげなかった映画

おすすめの映画をなるべく紹介したいのですが、今回、いろんな理由で紹介しなかった映画は以下のものです。

【ハナ ~奇跡の46日間】感動的な実話をもとにした映画で盛り上がる映画だが、クリシェが多かった。
【クロユリ団地】 アイドルホラーとしてはきわめて誠実に作っているのだが……。
【L. A.ギャングストーリー】 ゆるすぎる勧善懲悪プロットとむやみな演出。
【フッテージ】  Jホラーのアダプテーションがうまい。よくできたホラー映画でした。
【モネ・ゲーム】 こういうのは大好き。コメディとコン・ムービーのウェルバランスな組み合わせ。

★近況
昨年から関わっている大型プロジェクトがいよいよ大詰めを迎え、むやみに忙しくなっています。こちらでその発表ができるときが楽しみではあります。

最新映画については、「水道橋博士のメルマ旬報」で、ご紹介!

※こちらのエントリーもどうぞ。

« シネコン至上主義#13 | メイン | シネコン至上主義#15 »

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

                

最近のエントリー

カウンターetc

人気ブログランキング - ゲームの王道 atom rss2.0
total カウンタ:today カウンタ:yesterday カウンタ

Pagerank/ページランク

人気記事ランキング

Google Adsense